Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM1074) Jack DeJohnette: Untitled (1976) 当時のデジョネットの凄さと同時に

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 ジャック・デジョネットって、キース・ジャレットと同じ時代、同じシーンで活躍している印象がある。チャールズ・ロイド、マイルス・デイビスでの共演のあと、Ruta and Daityaでの初ECM。それから10年後からのStandard Trio。

似ているなあ、と思うのは、ジャズ・ロック世代なので、彼らなりの伝統ジャズ外からの音楽要素の取り込み、多楽器への取り組み。そう、やや器用貧乏に見えなくもないときもある。だけど、キースのソプラノサックス、デジョネットのピアノは結構聴けたりするのである。

 で、このジャック・デジョネットECMでの、彼のグループとしての初アルバムは、そんなデジョネットの特性が詰まった玉手箱のようなアルバム。インド音楽風からフリー風まで様々なスタイル、リズムを取り上げている。それらが無理なく、デジョネットの多面性として表現されている。デジョネットがテナー・サックスを吹いているのには驚いたが。インド風(A2)は、やや疑問なのだけど、そんなことは気にならないくらい、A1のスタートは素晴らしい。1969年の欧州ツアーで見せたようなヴァイタルなドラムの打ち込みを聴くことができるし、それに呼応したアレックス・フォスターのブロウも素晴らしい。クロンビーの味付けも、非ジャズ的な音をジャズに溶け込ましているような感じがあって、聴いていて惹かれる。

時として、ベースのエフェクターに古さを感じる以外は、今の時代の音ととして十分聴けるような気がする。だから当時のデジョネットの凄さと同時に、その後(1990年代以降)のしんどさ(シーンを先導する印象が薄れている)を内包しているような気がするのだ。

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追記:

ECMとしてのロック的な要素の消化・昇華事例じゃないかと思う。今のECM世界ではないのだけど、先般のヴィトウスのWRモノに激しいドラミングを足したようなアルバム。先進的で力強い。

関連記事:

何とこのアルバム、CD化されていないようだ。信じられない!

 

 

この記事を書いてから、5年前の記事を書いたけど、同じ内容だね(苦笑)

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[2011-12-29記事] あの時代のECMって

 LPレコードプレーヤーが届いて聴いているのは、70年代ECMのおさらい。昨日アップしたDrum odeを聴いて、そうだった筈だよね、と思った。あの時代のECMって、音の透明度が高いことが売りで、決して低温の音ではなかったこと。そんな訳で、熱いドラマーであるデジョネットを聴いている。

 やはり、しっかりと熱気が伝わってくる。そして、それが透明感の強い音場に閉じ込められていて、そのコントラストに痺れてしまう。これが当時のECMだよね。耽美的な感じはスパイス程度で。

 70年代のデジョネットの音はいつ聴いてもしっくりくるように思う。post freeであり、また商業的なcrossover(嫌いじゃない)との間で、新しい音をアルバムごとに試行錯誤している様子が伝わる。これも、クロンビーの浮遊音をスパイスにアレックス・フォスターのテナーが抑制的にブロウする。背後からのデジョネットの制御下で、軽いグルーヴが延々と続けられる。これが格好いい。

 この、directions/new diretionsの方向もすごく惹かれるし、以前ブログにアップしたSpecial editionも言わずもがな。この頃のデジョネットの充実は何だろうね。今思うに、70年代はデジョネットのためにあったし、デジョネットは70年代のためにあったようにすら思える。1969年のマイルス・ヨーロッパ・ツアーのアルバム、冒頭がdirectionsという事実が象徴的だ。そしてそのdirectionsはデジョネットの激しい打ち込みではじまり、「伝統的なジャズ」からの決別を告げる。

 Free jazzが反伝統というイデオムで捉えられる限り、伝統で外枠が縛られ、ちっとも自由じゃなかったように聴こえる。後智恵で、卑怯な言辞だけど。これに気がついた(所謂)脱構築的な手法improvised musicは音楽そのものへの懐疑を生んでしまった。何故、音楽ってあるの、って。

 だから今になると、このアルバムでデジョネットが軽々と見せてくれた「次のジャズ」の処方って多彩だし、それがとても気持ち良く響いていることに驚いてしまう。CDでは発売されていないようだけど(どうかな)、もっと聴かれていい音楽だと思う。多分、今のアイヒャーの気分に合わないから、再発売されないように思うのだけど。

 

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(ECM1074) Jack DeJohnette: Untitled (1976)
A1. Flying Spirits (Jack DeJohnette) 13:50
A2. Pansori Visions (DeJohnette, Abercrombie) 2:20
A3. Fantastic (Foster, DeJohnette, Abercrombie, Richmond) 5:52
B1. The Vikings Are Coming (Jack DeJohnette) 6:43
B2. Struttin (Foster, DeJohnette, Abercrombie) 6:30
B3. Morning Star (Warren Bernhardt) 7:22
B4. Malibu Reggae (Jack DeJohnette) 3:03
Jack DeJohnette(ds, ts on B1), Alex Foster(ts,ss), John Abercrombie(g, el-g), Warren Bernhardt(p, el-p, , Clavinet, Cowbell), Mike Richmond (b, el-b),
Cover Design: Frieder Grindler
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Photograph: Roberto Masotti
Producer: Manfred Eicher
Released: 1976
Recorded February 1976 at Talent Studios, Oslo

 

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