Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Sylvie Courvoisieri: Miller's tale (2015)美しい音にとって即興とは

 ボクが現代音楽を聴く大きな動機は、今まで知り得なかった美しい音を聴く驚き、である。

 前衛的なジャズに関しては、美しい音だけでなく、様々なグルーヴ感なんかも加わる。現代音楽と前衛的なジャズを隔てるものは「即興性」に尽きるのだろうけど、作曲行為のなかでの即興の位置付けって何だろう。そんなことが疑問として膨らんでいて、SNSでのH松氏の投稿でデレク・ベイリーの本のことを知り、読もうと思っている。

 このアルバムがとてもいいなあ、と思うのは、即興であったとしても、そうでなかったと(仮に)しても、楽器の美しいこと、楽曲全体としてのグルーヴ感(広い意味)がともに素晴らしく、音を聴く快楽に満ちていること。そして、その(ある種の)グルーヴ感がサキソフォンとヴァイオリンが絡み合うなかで紡がれていて、とても複雑な音の景色を与えている。ジャズ的な音、現代音楽的な音がごく自然にコラージュされていて、音の景色のゆったりとした移ろい、が楽しい。ピアノとエレクトロニクスは控えめではあるが、音の空間の広がり、あるいは縁取りのような効果を与えていて、空間をより立体的なものにしている。

 このような、美しい音にとって即興とは、どのような意味があるのだろうか。記譜されていても、何ら価値を減ずるものではない。どのような音の効果が、即興から生じているのだろうか。無限に続きそうなrecursiveな思考がはじまりそうな気がする。

 さて、このアルバムを出版しているIntaktはスイスのレーベルなのだけど、最近はBandcampから電子配信を行っている:


 このレーベルの録音は清澄であり、過度の残響が付与されていないので、好み。しかも、96kHz, 24bitの高分解能データで配信されるのだけど、とても安価。奏者達の音が美しいこと、に加え、アルバムの音響品質もまた素晴らしいのだ。

 

----------------------------------------------------------------------

Sylvie Courvoisier, Mark Feldman, Evan Parker, Ikue Mori: Miller's tale (2015, Intakt Records)
1. Death of a Salesman (Courvoisier-Feldman-Mori-Parker) 7:57
2. A View from the Bridge (Courvoisier-Feldman-Mori-Parker) 6:30
3. The American Dream (Courvoisier-Feldman-Mori-Parker) 13:30
4. Up from Paradise (Courvoisier-Feldman-Mori-Parker) 8:03
5. Riding on a Smile and a Shoeshine (Feldman-Mori) 6:13
6. Playing for Time (Courvoisier-Parker) 4:47
7. The Reason Why (Feldman-Parker) 5:01
8. Nothing's Planted (Mori-Parker) 3:41
9. A Fountain Pen (Courvoisier-Mori) 3:46
Sylvie Courvoisier(p), Mark Feldman(vln). Evan Parker(ss, ts), Ikue Mori (Electronics)
Recorded at Oktaven Audio in Yonkers, New York, September 21, 2015.
Recording and mixing: Ryan Streber.
Mastering: Steve Berson.
Cover art: Mario Del Curto
Graphic design: Jonas Schoder
Band photo: Caroline Mardok.
Liner notes: Henning Bolte.
Produce: Sylvie Courvoisier, Mark Feldman and Intakt Records, Patrik Landolt