Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

David Liebman: First Visit (1973) あの時代の日本

 あの時代の日本、万博の3年後、の凄さ、を今に伝えるアルバム。所得水準ではまだまだ先進国との格差はあって、微妙に豊かさに届いていない感覚。でも急速に、各家庭に電話、乗用車、ステレオ装置など「生活のゆとり製品」が急速に普及していた、その勢いそのもの(国力の微係数)のようなものが最大値になっていた、時代。豊かさは現代の方が遙かに勝っている。しかし、人が陶酔するのは変化量そのものなのだ。

 その時代故のイキゴミのようなものを端々に感じる。このアルバムの素晴らしさはメンバーをみれは疑いもないのだが、これを作った日本勢のイキゴミが凄い、と思うのだ。来日中のマイルスバンド(新宿厚生年金でやったときね)のテナーと、来日中のゲッツバンドのリズムセクションを組み合わせたアルバム。リーブマンはOpen Sky(自主レーベルであるPMから)に続く2作目。

 針を落とすと、まず録音の良さ、それもBNとか古い世代の音でなく、ECMと同時代の明瞭な音空間。そのなかで、スピーカの真ん前に定位する距離感が近い、強い音圧。その素晴らしさに圧倒される。いつも不思議なのだけど、1970年前後に何が起こっているのだろう。この時期の日本での制作盤の素晴らしさ、には驚いてしまう。その後のEast Windレーベルにつながっていく音の豊かさをしっかり感じる。

 さて演奏内容なのだけど、A面がカルテットの演奏。B面がデュオやトリオで4曲全ての編成が異なる。A面1曲目の疾走するような真っ直ぐな演奏も気持ちよいし、B面でリーブマンと対峙する奏者の誰もが強靱で気持ちよい。リーブマン2枚目のアルバムとは思えないほど完成度は高い。そこで、はっと思った。この完成度の高さ、からの緩い傾斜の延長線上に今の演奏があるように思えること。音や音色に深みを加えていることには、何ら疑いはないのだけど。もっと大きな、音楽的な変容があっても良かったのでは、と思えてならない。

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David Liebman: First Visit (1973, 日本フィリップス)
A1. Man-child (Beirach) 12:15
A2. Vedana(Holland) 10:07
B1. Round about midnight(Monk) 7:47 (Liebman+Beirach)
B2. Tommy's Hut (Liebman) 3:31 (Liebman+Holand+DeJohnette)
B3. Lonnies's Song (Liebman) 3:00 (Liebman+Holand)
B4. First Visit (Liebman) 8:52 (Liebman+DeJohnette)
David Liebman(ss, ts, fl), Richard Beirach(p), Dave Holland(b), Jack DeJohnette(ds)
Producer: Toshinori Koinuma
Director: Yasohachi Itoh
Engineer: Suenori Fukui
Recorded at Aoyama Victor studio at 20,21 June 1973