Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM2445) Keith Jarrett: Barber / Bartok / Jarrett (1984,85) うーん

 山だの釣りだの、そんなことを書いているので、そろそろ音楽を、って思っていたけど、気が多くて手が出なかった。

 先日、この世を去ったコールマンのディスクを聴いたり、ECMレコード聴きシリーズでキースのIn the Lightの2枚組を聴いたり、焦点が定まらないので書けない。オーネットのことを考えていると、70年代のimpulseのキースはオーネットの音をピアノで展開したものだなあ、とか散漫に思いついたり。ECMの初クラッシクアルバムがIn the Lightなんだなあ、とはじめて知ったり(はじめて聴いたからね)、そんな感じ。

 古い音源ばかり聴いているのだけど、昨日はKeithのCreationに続き、New seriesの現代音楽のものが届いた。BarberやBartokのピアノ協奏曲。楽しみ、という気持と、少し引っかかったような気持とが、半ば拮抗していた。

 結論から云うと、その2つの気持の間を揺れるようなアルバムだった。

 少し遠回りの話からはじめる。ジャズ奏者のクラシックへのアプローチで生を聴いたことがあるのは、小曽根真ショパンショスタコーヴィッチの協奏曲、山下洋輔ガーシュイン。Mちゃんに勧められて聴いた、小曽根真ショパンは良かった。楽曲が持つポピュラー音楽としての側面が、彼の柔らかい響きとともに、とても良く理解できたから。ショパンの曲からジョビンの曲への流れ、には驚きと心地よさが溢れたものだった。一方、金沢のOEKと共演したショスタコーヴィッチの協奏曲は、正直しんどいものを感じた。あのスピード感を維持することが精一杯、という印象。しかも、「子供の砂場」のような原曲にないソロパートをもらって、ジャズ的アドリブを披露。これは山下洋輔ガーシュインもそうで、異種間バトルのような悪趣味に感じて仕方がなかった。超絶技巧を要する現代曲は、技巧そのものの制御精度で快感のツボを押さえていく、それが曲そして演奏の魅力だと思うのだ。だからジャズ奏者には向かないし、だからこその「子供の砂場」のように感じてしまうのだ。

 このアルバムが届く直前、前述のように、ECMの最初のクラシックアルバムであるキース作曲のIn the Lightを聴いていたのだけど、演奏云々以前に曲の魅力が薄く、少々辛い印象を持っていた。だからこそ、BarberやBartokの曲を弾くキースを聴くことが楽しみだったのも事実。曲は快感指数が高い彼らに任せ、キースのピアノを楽しめば良いのだから。しかし一方で小曽根真ショスタコーヴィッチが頭の片隅にあるのも事実で、だから少し引っかかったような気持ちになっていたのだ。さすがに「子供の砂場」パートはない、と思ったが。

 キースのクラシックの演奏はジャズ系と違ってケレン味のない、実直な演奏だと思う。ショスタコーヴィッチのプレリュードとフーガを聴いても、そう思う。一方、協奏曲は技巧に裏付けられた高度なケレン味が魅力じゃないか、と思う。キースとの相性に疑問があるのだ。そこまでの技巧、はないと思うから(気の毒なのだけど、アルヘリッチのバルトークと比較すると、やはりそう思う)。勿論、良く健闘していて、粒度の高い音を聴かせてオッと思わせる箇所も少なからずあるのだけど、早い音を出すだけで精一杯の箇所もあるのだ。

 出なければ良かった、とまでは思わない。キースのピアノ奏者としての地平線まで見えられたような感覚で、それはそれで納得できる内容だし、曲が好きだから聴けるのだ。ただ、そんな意地悪な心象を生むことが、残念なようにも感じる。今まで30年以上も蔵に入っていた理由はコレかなあ、と思った一枚だった。でもね、In the lightよりも楽しめたのも事実。あ、これも意地悪な心象だなあ。

 ま、この手の曲はアルヘリッチやエマールで聴きたい、というのが本音。高い快感指数、という意味で。うーん。

youtu.be

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[ECM 2445] Keith Jarrett: Barber / Bartok / Jarrett
1. Piano Concerto Op. 38 (Samuel Barber)
I. Allegro Appassionato 12:32
II. Canzone Moderato 6:16
III. Allegro Molto 7:55
Conductor: Dennis Russell Davies
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrucken
Concert recording, June 3, 1984
at Congresshalle, Saarbrucken
2. Piano Concerto No. 3 Sz. 119 (Bela Bartok)
I. Allegretto 7:42
II. Adagio Religioso 10:16
III. Allegro Vivace 9:08
Conductor:Kazuyoshi Akiyama
New Japan Philharmonic Orchestra
Concert recording, January 30, 1985
at Kan'i Hoken Hall, Tokyo,
3. Tokyo Encore/ Nothing But A Dream (Keith Jarrett) 4:52
as part of Tokyo Music Joy Festival
Piano: Keith Jarrett
Design: Sascha Kleis
Painting [Cover Painting]: Mayo Bucher
Executive-Producer: Manfred Eichert
Released:08 May 2015