Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM1024) Gary Burton, Chick Corea: Crystal Silence (1972) 隅々まで行き渡ったような美意識

 もう完全に1970年代のECMの世界。そんな安心感ではじまり、おわる。

 改めてここまでの二十数枚を眺めると、ジャケットの雰囲気は2つ前のRTFから、後年との連続性を強く感じるデザインになっている。録音もそう。商業的な成功、の以前に(発売ピッチが緩んだ)1972年を通じて、ECMが熟成されたように思える。だからこその商業的成功、ではなかろうか。同時期に設立されたホルストのEnjaとの差異があまり感じられなかった1020番以前の録音から、アイヒャーの個性が「credit外の奏者」として加わることで、本当の意味でECMが出来上がったように思う。

 改めて思うのだけど、1970年代末からECMを聴き始めて感じたのは「音の間口の広さ」と「それを縫合する統一的世界観」への驚きだった。今のECMは明らかに「間口は狭まっている」し、世界観の弛緩を感じるのだけど、どうだろうか。破綻をきたしていない46年は素晴らしいのは勿論だけど。 

  このアルバムは現在のECMと一直線に繋がる感じの音。ピアノとヴィブラホンという似た特性の音が上手く広がりを持って捉えられている。何よりも「弛緩した空気」のような心地よさ、を感じさせる初めてのアルバム。そのような、ゆったりとした時間が透明度の高い空間を、そして静謐さを感じさせる音に昇華している。まさに沈黙の次に美しい音、という看板が立ち上がった瞬間、がこのアルバムだと思う。

 そのような作品概念がジャケットとともに訴えかける、ような、隅々まで行き渡ったような美意識、それがECMの真骨頂であり、その中心軸がこのアルバムから築かれている。ジャズを源にもつ室内楽的な音楽。ジム・ホールビル・エヴァンスのデュオで示されたジャズの可能性(白いジャズだ)を、一つのスタイルとして完成度を上げだ作品にしている、と思う。

 ジャケットをみると、このアルバムはバートンのcreditのほうが先。アイヒャーの仕事には、credit一つ一つに意図を強く感じる。元来はバートンのアイデアではじまったのだろうか。このあたりは、きっと様々な文献で記載されているのだろうな。元来はチックの音世界ではないようにも思える、心地よい緩い感じ。


参考記事:

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[ECM1024] Gary Burton, Chick Corea: Crystal Silence (1972)
A1. Senor Mouse (Chick Corea) 6:16
A2. Arise, Her Eyes (Steve Swallow) 5:05
A3. I'm Your Pal (Steve Swallow) 4:00
A4. Desert Air (Chick Corea) 6:23
B1. Crystal Silence (Chick Corea) 9:01
B2. Falling Grace (Steve Swallow) 2:37
B3. Feelings And Things (Mike Gibbs) 4:40
B4. Childrens Song (Chick Corea) 2:07
B5. What Game Shall We Play Today (Chick Corea) 3:42
Chick Corea(p), Gary Burton(vib)
Design: B & B Wojirsch
Photograph: Hans Paysan
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Release: 1973
Recorded on November 6, 1972 at Arne Bendiksen Studio, Oslo.

 

ジャケット、レーベルにLC番号はないので、初期のプレスだが....(背文字あり、がデフォルトに)

ラベルにMade in Germany あり(なし、がオリジナル)