Kanazawa Jazz Days

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(ECM1022) Chick Corea: Return To Forever (1972) ジャズの神話時代から現代のジャズへ切り替わった瞬間

 今日は雨。渓流へ出かけるのはお休み。仕事では、いろいろ心中穏やかざる事もあり、ECMのレコードをゆったり聴く時間もなかった。そんな日々なのだけど、ECM1000番台の西独盤は揃ったので、気に入ったレコードについてはゆっくりオリジナルを揃えていきたい、と思う。 

 さて、語る必要すらないチック・コリアの名盤。怒濤のような1971年から明け、録音、内容ともにECMらしいもの、じゃないか、と思う。はじめて聴いた1970年代のお仕舞いに、「カモメのRTF」と呼ばれ、チックの商業的成功にスポットが当てられていた、ように思う。モードジャズからフュージョンへの進化論の是非、のような論調が残っていた時分。今になって聴くと、とても自然な音楽で、初期のECMの良さであると思う「電気楽器の美しい音処理」の典型的な事例。十分な奥行きのあるECM的な音空間のなかで、躍動する楽器と歌い手。アルバム全体には陰翳が強く、喧伝されたようなPOPな感じ、は案外なくて、このアルバムがヒットした(と伝えられる)ことに驚きを感じる。そして陰翳のなかに、ときおり明るい光が射す、ような感じ。

 このアルバムはニューヨークの録音であり、エンジニアもいつもとは違う。だから音はやや柔らかい、ように思う。それでも1971年の「調整期のような時間」を経て、ECMらしい音楽や音場が気がつくと出来上がっていることに気がつく。カタログを見ると、以降は安定した音造りが行われている。

 ブラジル系奏者との「似たような音楽」はデューク・ピアソンがやっていて、Blue Noteに2枚のアルバムが残されている。アイアートやプリムが参加している。1970年の段階でプリムがミルトンの曲を唄い、パスコアールも参加している。Fender Rhodesを弾くピアソンは後年のチック風。時期的にはピアソンのほうが早い。それが原型のように感じる。でも2枚目のアルバムの発売は1974年。これらのピアソンのアルバムに決定的に欠けているのは、「聴者との時間の共有性」と「統一された音の世界観」じゃなかろうか。発売されたほうのアルバムはゲッツ・ジョビンの延長線でやや古い。MPBとの接点が鮮明に捉えられている1枚は録音当初に発売されなかった。また、ライオン時代のBlue Noteのような統一的な音世界は、もうない。

 今になって、ECM1001番から聴くなかでの、このアルバムは十分ECMらしいアルバムであり、ピアソンのアルバムが持っている「音の世界感の不足」はなく、ECM的な音世界の付加、が強い魅力を放っている。そして、1972年に発売され、聴者との時間の共有性を未だに保持している。

 そうBlue Note的なジャズの神話時代から、現代のジャズへ切り替わった瞬間を捉えているように思えてならない。

 


 

関連記事:

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[ECM1022] Chick Corea: Return To Forever (1972)
A1. Return To Forever (Chick Corea) 12:06
A2. Crystal Silence (Chick Corea) 6:55
A3. What Game Shall We Play Today (Chick Corea) 4:26
B. Sometime Ago - La Fiesta (Chick Corea) 23:18
Chick Corea (el-p), Joe Farrell(ss, fl), Stanley Clarke(b), Airto Moreira(ds, perc), Flora Purim(vo, perc)
Engineer: Tony May
Photography: Michael Manoogian
Producer: Manfred Eicher
Recorded February 2 & 3, 1972 at A & R Studios, New York

買ったのは1979年。この頃のプレス。だから勿論、背文字がある。

ジャケットにLC番号。後年のプレス。
この頃のチックのジャケット裏には、いろいろ書いてある。 

Made in Germanyがないものがオリジナルだそうだ