Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM1016) Terje Rypdal: Terje Rypdal (1971) 1971年夏のオスロ、そして時代の音

 こうやって時系列にアルバムを聴く、という行為は、光陰を追いかけるが行為で、とても濃密な「時間体験」ができる、ということに気が付きつつある。1960年代末から1980年代過ぎの「大衆音楽が熱い時代」そのものを欧州の片隅で体験しているような、感覚。じゃあボクが1971年に佇んでいるとして、どんなアルバムが録音されたり、出たりしているのだろうか。ボクがリアルタイムの時間共有ができるのが1979年。このリピダルのアルバムが録音されたのは1971年8月12日から13日のオスロ

明記していないものは録音日。ECM以外はリリース日が多い。アイヒャーをとりまく1971年、特に夏までの動きである。

1971: 
? : "Herbie Hancock: Mwandishi" release
Jan. 11 - 13 : "Chick Corea: A.R.C." (Ludwigsburg,)
Feb. 15 : "David Holland, Barre Phillips: Music From Two Basses" (Ludwigsburg,)
Feb. 16 - 22 : "Weather Report"
Feb. 21 : "Chick Corea: Circle Paris concert"
Feb. 24 : "Miles Davis: Jack Johnson" Release (Recording in 1970)
March-Nov. : "Miles Davis 6/7 tour including Keith Jarrett "
March 17 : "Weather Report"
Apr. 14, 15 : "Jan Garbarek: Sart" (Oslo)
April 21, 22 : "Chick Corea: Piano Improvisations" recording (Oslo)
May : "Keith Jarrett, Jack DeJohnette: Ruta And Daitya" (USA)
May 12 : "Weather Report" Release
May 18, 19 : "Bobo Stenson: Underwear" (Oslo)
June 27 : "Weather Report At Ossiach Live" (Austria)
Aug. 12,13 : "Terje Rypdal" (Oslo)
Aug.14 : "Mahavishnu Orchestra: The Inner Mounting Flame" Release
Nov.10 : " Keith Jarrett: Facing You" (Oslo)
Nov.17 : "Miles Davis: Live evil" release (Recording in Nov.17, 1970)
with Keith Jarrett and John McLaughlin
1972:
Feb.2, 3: "Return to forever" recording

1月、2月はアイヒャーは西独での録音が主体。
マイルスバンドを退団したチックはブラックストンとのサークルで、パリコンサートまで。フリー寄りの演奏に区切りをつけつつある。
同時期にWeather Reportが録音されている。
またマイルスのJack Johnsonの発売は2月。英国出身のマクラフリンがカッコ良く刻んでいる。
マクラフリンとキースが入ったマイルス・バンドのセラーズでのライヴは前年。3月からはマクラフリン抜き、キース含むマイルス6/7が欧州を含むツアーに。ベースはヘンダーソンでファンク。
そんな電化・ビートのなかで、アイヒャーは4月から8月にかけてオスロでの収録が主体となる。4月にガルバレクとSART、チックのPiano Improvisations、5月にボボとunderwear収録。同時期にWeather Reportが発売、6月から欧州を含むツアー。
そんななか、8月にこのリピダルが収録されている。夏のオスロ

ちなみに、このリピダルの収録翌日に、マハヴィッシュヌ・オーケストラのデビュー作が発売。 秋頃にはキースのFacing youがやはりオスロで収録されている。チックのRTFはまだまだ彼の頭の中。

 

さてECMのこと:

ガルバレクのSARTは、既に書いたように、ECM的な音場に近づきながらも、何か中途半端な感じが否めない部分もあった。このリピダルのアルバムを聴くと、エフェクターの電化音も含め「ECMの音」がほぼ完成しているように思う。

真ん中に軽やかなドラム、左にアンデルセンの電気ベースが刻み、リピダルのギターは左右。多分、多重録音。エフェクターは抑制的で、後年のオデッセイに連なる音。奏者には適度な残響が与えられ、眼を閉じると背後の空間が浮かび上がる。たとえ激しい音であっても、沈黙のなかから音が沸き上がるような感覚、がある。

そして1970年代のECMの広い間口そのもので、非ジャズ的なビート、そして幾ばくかフリーの味わいも流れていく。しかし、全体としての音の味付けは統一的。そう、1971年の前半のオスロで確かにECM的な何かが生まれている、と確信している。

演奏そのものは、先ほどの一連の時代の音が詰め込まれている。曲によっては、weather reportのspacyな音の空間を持っている。いや、かなりあからさまに意識している、と感じる。また、ある曲ではJack Johnsonのギターのカッティングが直接的にきこえる。そんな1971年前半のドキュメンタリー・記録そのものが瑞々しく、ECMという生まれたばかりの容器に収められている。多分に、夏のオスロ、日付が変わるまで地平線が明るい、多分に享楽的な北欧の夏とともに、1971年前半の空気が詰め込まれている。

ドイツのsellerから届いた1枚のLPレコード、時々、擦り切れたような雑音は断続的に入る、を聴きながら、40年以上前に思いを馳せていた。そんなことを考えさせる盤、なのだ。

いや記録的な意味だけでなく、アルバムとしても好みに入っていて、けっこう聴きそうな気がする。

参考記事:

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[ECM1016] Terje Rypdal: Terje Rypdal(1971)
A1. Keep It Like That - Tight 12:10
A2. Rainbow 7:05
B1. Electric Fantasy 15:45
B2 . Lontano II 3:10
B3 . Tough Enough 4:45
Terje Rypdal(g,fl), Jan Garbarek(ts, fl, cl), Ekkehard Fintl(Oboe, English Horn ), Bobo Stenson (p on A1, A2, B2, B3), Tom Halversen (p on B1), Arild Andersen (b on A1 - B2), Bjørnar Andresen(b on B3), Jon Christensen(ds), Inger Lise Rypdal(voice)
Cover Design: B & B Wojirsch
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Recorded on Aug. 12 and 13, 1971 at the Arne Bendiksen Studio, Oslo