Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM1011) David Holland, Barre Phillips: Music From Two Basses (1971) ECMらしいもの、が宿った瞬間

  ECMの最初期の10枚を毎日聴いていると、45年続いているECMも、最初からあった訳でなく、アイヒャーの試行錯誤(あるいは思考遍歴)のようなものが見えてくる。時代の思潮の少し先を狙いながら、出来上がった作品を見ながら微修正を繰り返す、そんなことだろう。彼の軌跡を駆け足で体験するような時間を過ごしている。

  最初の10枚を聴いて、今のECMとの差分を感じながら、改めてボクにとってのECMを再確認するような作業でもあって、面白い。今、ボクは半世紀近く前のアイヒャーと旅をしている。

  設立から1年過ぎ、1970年の秋は録音を休み、明けて1971年の1月にA.R.C.、そして同じベースのホランドを起用し、2月にこのアルバム。いわゆるFree Jazzの範疇ではあるが、明らかに現代音楽と同じ意味での前衛性を有する。つまり、過去から積み上げてきた調性の規範によらない美の探求、である。その意識が貫徹している限りにおいて、ジャズの室内楽、的な香りが横溢する。その香りこそが、1970年代のECMの魅力の1つ、ではなかろうか。そのような試み、珠の原石のような音達が溢れでて、時間をかけた濾過により、純度が高い美が育まれる。

 そのような音の営みの第一歩、のように聴こえてならない。確かに、音楽の枠をぎりぎりまで使っているのだけど、相手の音の隙間に、自分の音を差し込むようなimprovisationは紛れも無くジャズという開かれたプラットフォームのうえ、の音楽なんだと思う。そして、ふっと感じさせる音の美しさは、メシアンの鳥の楽曲を聴いているときと相似な感覚を覚える。

 ECMらしいもの、が宿った瞬間、を聴いた。

 それが「ジャズの室内楽」であり、「Contemporary music」であり、来るべき「The Most Beautiful Sound Next To Silence」への路だった、のではなかろうか。

  ジャケットが醸し出す雰囲気も、まさに後年のECMとの連続性を感じさせ、当時の欧州の競合レーベル(Enja, MPS, Steeple Chaseなど)とは際立って異なる「強い個性」のレーベルへまさに踏み出す瞬間を見たような気がする。

工藤さんのページ:http://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2005/06/music-from-two.html

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[ECM1011] David Holland, Barre Phillips: Music From Two Basses (1971)
A1. Improvised Piece I
A2. Improvised Piece II
B1. Beans
B2. Raindrops
B3. Maybe I Can Sing It For You
B4. Just A Whisper
B5. Song For Clare
David Holland(b), Barre Phillips(b, cello)
Cover drawing: Vinny Golia
Photography: Jorg Becker
Layout: B. & B. Wojirsch
Engineer: Rapp, Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded on February 15th, 1971
at Tonstudio Bauer in Ludwigsburg