Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Charlie Haden: Closeness (1976) 秘められた花のように


 一昨日、彼の訃報が走った。さざ波のように、人々のこころを揺さぶったことを知った。好き嫌い、は様々であろうが、その存在感は大きなものであった。

 しかしジャズという音楽の中での彼の存在は中心の日の当たる場所に見えたのではなく、ふっと意識が抜けてしまうような音の彷徨の中で、隅の方で静かに燃えている炎、それも焚き火の燠のようなものであった。距離をとらないと、見えぬ炎のようなものに熱される。秘められた花のように。意識の底まで入り込んでくる。その在り方が、ヒトによっては心地よく、ヒトによっては気色わるい、のではないか。

 ボクが彼の存在に気がついたのは、キースジャレット・カルテットの何枚かのimpulse盤やキースジャレット・トリオのAtlantic盤。全般的にまとまりのない、散漫な演奏が多いのだけど、飛び散ったオトのカケラの中に、美しい玉のようなものが混じっていて、ジャレット、ヘイデン、モチアンのインター・プレイの面白さに惹かれた。だから、彼らの美しい側面を切り出したアイヒャーによる2枚のアルバムは、とても好ましく思ったものだ。

 このアルバムのA1、ジャレットとのデュオはECM以外の数少ない耽美的な好演。最近のECMのような、「狙い過ぎ感」もなく、流れるような音の美しさ、力強い即興の積み重ねに驚いてしまう。そして、残念なほど、音が過ぎ去ってしまう。最晩年のECMの2枚と比べると、そこには「若さ」が確かにあり、甘さに若い力が漲っているのだ。

 オーネットとのA2も「奇妙なビート感」に溢れていて、ボクにといっては「わかりやすい」オーネットの好演。通して聴くと、一貫したヘイデンの魅力が、低音で紡ぎあげるような素朴なメロディであることを感じる。フォーク曲のような。

 B面の印象も同じなのだけど、音楽への政治主張の入れ方が「直接的」で、やや白けてしまう部分がある。だから例のオーケストラも意図的に持っていない。

 思い起こすと、ヘイデンのデュオにはずいぶんと魅了されたような気がする。やはり意識の奥に沈んでいて、普段はまったく気にしていなかった。秘められた花のようなオトだと、死して、改めて想った。

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Charlie Haden: Closeness (1976, Horizon)
A1. Ellen David
A2. O.C.
B1. For Turiya
B2. For a Free Portugal
Charlie Haden (b), Keith Jarrett(p on A1), Ornette Coleman(as on A2), Alice Coltrane (harp on B1), Paul Motian (percon B2)