Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Chick Corea: Light as a feather (1972) オトが造る空間


 突然9月がはじまったような気がする。8月が終わるような、段階的に熱を冷ましていくような小さなきっかけを掴まないまま、ストンと落ちたように9月がはじまった。気がつくと、窓の隙間から流れ込む、寒々とした、そして夜明け前からの強い雨で湿気を孕んだ空気が線を描くように吹き込む。滅多に見ない夢のなかで、焦りながら何かを探しているうちに目が覚め、この冷たい大気の流れの中で何処にいるのだか分からなかった。 

  昔の奏者の昔にプレスされたLPレコードばかり聴いているのだけど、何か憑かれたような感覚があって、イケナイような気がしている。CDと比べて毒が強い。季節も変わりつつあることだし、死者のオトばかり聴いていないで、生者のオトを聴かなくちゃ、って思っている。生きているウチには辿り着けない、半世紀くらい昔にタマシイを置きに行くような日々だから。山に行くと風の音しかなくて、ほっとするからね。

 だから仕事場の簡単な装置で、CD音源を聴いていると何とも気軽でいいなあ、と思ったりするのは、倒錯していてヘンなのだけど、まあ仕方がない。

 今日聴いているのは、チックとスタンリー・クラークの「Return To Forever」の第2作、カモメのRTFと同じメンバーでポリドールに吹き込んだもの。ECMの初作(カモメ)と同じ、軽いタッチのBrazilian fusionなのだけど、初作よりもより軽い空気をまとった爽やかな音楽。今聴くと、カオメのRTFが大ヒットしたとは信じがたく、小難しい空気をまとっていて、眉間にシワを寄せて聴くような瞬間が案外多い。それと比べると、そんな重さは少しもなく、中途半端な精神性を追いかけない、純粋にオトの楽しさを追い求めたような良さを感じる。また、スタンリー・クラークのドライヴ感も気持ちよく、昔の「Fusion/Cross-overはジャズじゃない」議論が嘘のように、ジャズとしてのビート感が気持よい。1960年代後半の新しいフォームのためのフォーム、のようなジャズの隘路が溢れた頃に、この手の音楽が清新に聞こえた理由が何となくわかる。オトが造る空間、の整合性がとても良いのだ。

 それにしても、この10年あまりチック・コリアにトキめかないのは何故だろう。彼自身、ジャズのフォームという隘路に飛び込んでしまって久しいなあ、と思ってしまう。一音一音打ち込んでいくような愚直さ、と無縁の賢い奏者なんだろうな、と思う。作られた感じ、も悪くないのだけど、作る以上、新しさを感じさせる必要があると思うんだよね。既視感が残る、が寂しいことなんだと思う。

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Chick Corea: Light as a feather (1972, Polydor)
1. You're Everything
2. Light as a Feather
3. Captain Marvel
4. 500 Miles High
5. Children's Song
6. Spain
Chick Corea(el-p), Stanley Clarke(b), Joe Farrell(ts,fl), Flora Purim(vo, perc), Airto Moreira(ds)