Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Bill Evans: At the Montreux Jazz Festival(1968) 暖かい雨の朝を軽い読書で

 走ろうと思って早く寝た。だけど起きたら雨。とても暖かくて気持ちが良い。こんな朝だったら雨でもいいな、って思った。

 仕方がないから、薄暗い時間からレコード聴きながら読書。何ともいえない満ち足りた感覚がある。レコードは亡父の箱からみつけたビル・エヴァンスモントルー・ジャズ・フェスティバル(ロマン湖畔のお城のジャケット)。日本で直輸入盤として発売され珍しくないようだけど、Verveのオリジナル盤(黒Tというレーベル)。ちょうど1970年の万博の時分は日本が豊かになった、と実感した頃。外貨規制が外れて、輸入が容易になった。亡父が嬉しそうにポール・モーリアの仏・直輸入盤の帯をつけたレコードを嬉しそうに買ってきたのを思い出した。流行、だったのだ。

 ボクが持っている日本盤と比べ、薄いヴェールが剥がされたような、すっきりとした音。ノイズはやや多いのだけど。(多分)日本盤には「細やかなイコライザ処理」のようなことが施され、繊細な感じの音になっている。これは日本盤共通の音色。米盤はもっとガツンと荒い感じだが、ボクの好みに合う。牛肉の違いと似ている。細かな食育で作られた霜降りと直球の赤身。ボクは肉本来の旨味が楽しめる米国牛のほうが好きだし、そこにピアノがあるような米盤の音が好きだ。介在する第三者が見えてこないような。

 演奏はあのメンバーだからね。何も云うことがない。語れば語るほど、真実から遠ざかるような素晴らしい演奏。彼の美しい響きがライヴの熱気のなかで高速にドライヴしている。ゴメスも後年のように過剰に饒舌ではない。必要なインプロヴィゼーションを繰り出しているだけだ。デジョネットの攻撃的なドラムが、エヴァンスの耽美的な印象を崩し、まさに男性的な強いプレイを引き出している。何回も何回も回してしまった。

 レコードを聴きながらの読書のことだけど。

 先日は和田誠村上春樹のPortrait in Jazz第二巻のレコードを引っ張り出して聴いていた。そのときに同じように引っ張りだした「意味がなければスイングはない」を拾い読み。全てに満ち足りた筈のウィントン・マルサリスの退屈さ、には全く同意したのだけど、何か同じような感覚を最近の彼の小説に感じる。自由に飛翔できる翼が背中に生えたとき、自由に飛び回りことに自由さを感じることができるのか、のような感じ。初期と比べて圧倒的な筆力で書く世界が、それに相応しいか、といおうか。技量と世界観のバランスが崩れつつあるように思えるのだ。まさにマルサリスの問題はそこだからね。もう少しこのことを考えてみたい。云いたいこと、わからないよね?

追記:

文章中リンクを張ったサイトのオリジナル盤論議は読み物として、とても面白かった。お茶の水に宿泊中に読んで、11時のディスクユニオン開店と同時に、このレコードを探しにいたけどなくて、代わりに「直輸入盤」のWhat's new(言わずもがな、のエヴァンス名盤・録音優秀盤)を買ってきた。まさか亡父のレコード箱で眠っていたとは思わなかった。

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Bill Evans: At the Montreux Jazz Festival(1968, Verve)
A1. "One for Helen" (Bill Evans) – 5:22
A2. "A Sleepin' Bee" (Harold Arlen, Truman Capote) – 6:05
A3. "Mother of Earl" (Earl Zindars) – 5:14
A4. "Nardis" (Miles Davis) – 8:23
B1. "I Loves You, Porgy" (George Gershwin, Ira Gershwin, DuBose Heyward) – 6:00
B2. "The Touch of Your Lips" (Ray Noble) – 4:45
B3. "Embraceable You" (G. Gershwin, I. Gershwin) – 6:45
B4. "Some Day My Prince Will Come" (Frank Churchill, Larry Morey) – 6:08
B5. "Walkin' Up" (Evans) – 3:45
Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Jack DeJohnette(ds)