Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

浅川マキ:ライヴ夜(1978)声の湿度、声の温度

 長い間、困惑していた。日本のジャズ(和ジャズって言い方には違和感が強い)を聴いていくと、その終着駅のように浅川マキのアルバムが遠くに見える。そして、伝え聞くその駅の噂は暗く、荒れている。だから、途中下車し、その駅には行かなかった。

 それでも、やはり聴かなくてはいけない、と思ったのは、前の仕事を無くして時間だけが沢山あったとき。学生以来かな。関内の中古レコード屋で彼女のレコード、紀伊国屋ホールでの大晦日のライヴを手にしたとき。針を下ろしてみると、暗くも、荒れてもいなかった。ジャズ弾きと唄い手の愉悦が刻まれていた、に過ぎなかった。そして、それを知ってから1年も経たないうちに、その唄い手は名古屋で生を終えた。その声を直接聴く機会を失った。だから、ボクは円盤から知る音が全て。

 本を二冊読んだ。彼女自身のものと周囲の懐古談。浅川マキというシンボリックな名前を媒体に、自身の70年代を語る男達、ボクには読み辛いものだった。聴く前に伝え聞いていたのは、そんな空気。それに比べ、本人の語り口はとても淡泊で、旅に生きる女寅さんの風情。音で聴く、あの世界。

 もう一つ、困惑したことがあった。聴きたいと思ってCDを手に入れようと思っても、難しかった。彼女の死とともに堰を切ったようにCDが発売されはじめた。何故、と思った。いつしか、唄い手自身、CDの音に馴染めず、時代から取り残されることを選んだ、と知った。すっぽりとLPレコードに埋もれはじめた今なら分かる。媒体に積み込まれた空気が違うのだ。時間とか時代、といったもの、時計の針が進んでしまうのだ。それが許せなかった、に違いない。

 声の湿度、声の温度、と云ったものがあれば、ある時空の記憶とともに音盤に封印されねばならない。

 そんな訳でLPレコードを集めはじめた。1970年代のもの、1980年代以降でも似たようなものを。昨日、「ライヴ夜」が届いた。なんとなく一区切り、の気分。ジャケットの帯や歌詞カードが、1977年11月の京大西部講堂の気分を伝えている。

 つのだひろのソロではじまり、そのうち淡々と唄がはじまる。そう、とても自然な呟きのような。

 

渋谷毅が呼ばれ、はじまった唄

 

 多分ね、20代の頃はコトバの強さに負けて、なかなか聴けなかったと思う。だからジャズを聴いていた、と思う。最近やっと、コトバの強さに距離をおいて、ゆったりとした気持ちで聴くことができるようになった。コトバとオトが織りなす作用は強いからね。

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wikiより引用

 A1. 町(作詩:森須九八/作曲:浅川マキ)
            アルバム『ブルー・スピリット・ブルース』より。
A2. あなたなしで Trying to live my life with-out you(日本語詩:浅川マキ/作詩・作曲:EUGENE WILLIAMS)
            アルバム『灯ともし頃 MAKI VII』より。
A3. 淋しさには名前がない(作詩・作曲:浅川マキ)
            アルバム『浅川マキの世界』より。
A4. 港の彼岸花 (作詩:浅川マキ/補作詩:なかにし礼/作曲:鈴木薫)
            アルバム『MAKI II』より。
A5. オールド・レインコート OLD RAINCOAT WON'T EVER LET YOU DOWN AN(作詩・作曲:ロッド・スチュワート/日本語詩:浅川マキ)
            アルバム『MAKI LIVE』より。
A6. IF I'M ON THE LATE SIDE (作詩:ロッド・スチュワート/作曲:ロニー・レーン/対訳:吉田健/日本語詩:浅川マキ)
            アルバム『流れを渡る』より。
A7. あたしのブギウギ(作詩:成田ヒロシ/作曲:南正人)
            アルバム『流れを渡る』より。
B1. あなたに(作詩・作曲:浅川マキ)
            アルバム『流れを渡る』より。
B2. 港町(作詩:Langston Hughes/作曲:山下洋輔/日本語詩:斎藤忠利)
            アルバム『MAKI VI』より。
B3. 裏窓(作詩:寺山修司/作曲:浅川マキ)
            アルバム『裏窓 MAKI V』より。
B4. 難破ブルース SHIPWRECK BLUES(作詩・作曲:ベッシー・スミス/日本語詩:浅川マキ)
            アルバム『ブルー・スピリット・ブルース』より。
B5. にぎわい(作詩:浅川マキ/作曲:かまやつひろし)
            アルバム『MAKI LIVE』より。
B6. それはスポットライトではない  It's not the spotlight(作詩・作曲:JOSEPH GOLDBERG BARRY JOSEPH GOLDBERG/日本語詩:浅川マキ)
            アルバム『灯ともし頃 MAKI VII』より。
浅川マキ(vo),萩原信義(g,el-g), 池田洋一郎(g),渋谷毅(p, A3,B1,B3,白井幹夫(p), 川端民生(b,B2,B3),吉田健(el-b),つのだひろ(ds), 粉川忠範(tb, B2,B3), 泉谷しげる(el-g)