Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Jazz会#22: All aspects of Keith Jarrett


 音響装置を整備し終わった後、最初のジャズ会のテーマをキース・ジャレットとした。ボクがジャズを聴きはじめたきっかけだから。改めて聴いてみようと思った。多くのヒト、ボクも含め、はケルンコンサートとか、美しいソロ演奏で入ったと思う。だけど、その彼の音楽の断章は単純ではなくて、悪い意味で混沌としたものであると思う。だから、ある種のプロデューサとの出会いが必須であり、その出会いあっての彼だと思う。その考えは多くのヒトが頷いてくれると思う。そのプロデューサは、勿論、ECMのアイヒャー。

 いろいろ考えたのだけど、彼の断片化している音楽の欠片を示してから、あとはゆっくりと彼の演奏を幾つか楽しんでもらおうと思った。

1. プロローグ

(1)[LP] Keith Jarrett: Koeln Concert (1975,ECM) piano solo

 1979年、ボクが18歳の梅雨時、友人の兄からキース・ジャレットを聴かされた、と思う。不確かな記憶なのだけど。そして京都三条の十字屋に買いに行ったのだけどタマタマ品切れで、河原町にある小さなレコード屋で買った。日本盤。そのころの原盤、西独盤は高価で手が出なかった。何回、このレコードを聴いただろうか。そして、何回、音が良い西独盤を買わなかった事を後悔したか(入手したのはつい最近)。ジャズ会のプロデューサKも、このケルン・コンサートでジャズに興味を持ったという。ご同慶の至り。今宵は西独盤のLPレコードで聴いてもらおうと思う。1970年代のECMレコードはあくまでLPレコードが正であり、CDの再マスタリング盤はいささか音に?があるから。このレコードがある限り、いつでも20歳前の鬱陶しい心地を掌中に転がすことができるように思える。

(2)Keith Jarrett: The Carnegie Concert(2005,ECM) piano solo

 実は20歳過ぎにキース・ジャレットに興味を失った。正確に云うと彼の新しいアルバムには。ジャズのいろいろな分野に興味が広がって。また仕事に熱中したこともある。ケルン・コンサートだけを聴き続けたように思う。ふっと再び気になる存在となったのは、このアルバムから。神戸のHMVでふっと手にした。淡々と聴いていく。アンコールの熱狂に驚き、そしてmy songの溜息。ボクも全く同じ音空間にいた。興味を失ったのが1982年頃。それから実に20年以上の時間が経っていた。このコンサートから、本編を幾つかとアンコールを幾つか抜粋したい。

2.1960年代:登場そして混沌

(3)[LP] John Coats Jr.:Alone and Live (1977) piano solo

 キースはペンシルヴァニアの出身。その片田舎に「鹿頭」というライヴ・ハウスがある。そこのハウス・ピアニストにジョン・コーツ・ジュニアという無名のヒトがいる。この方がキースの出発点でないか、と1970年代後半の日本で喧伝され、レコードが2枚ばかり出た。確かに、そのクラブにキース少年は良く来ていたそうだ。本当かどうか、音で聴いてみて感じるしかない。キースはこれについて何も語っていない。ただ後年、このライヴ・ハウスで演奏し、アルバムとしているのみである。

(4)[LP]Charles Lloyd:Dream Weaver(1966, Atlantic)

Charles Lloyd (ts, fl) Keith Jarrett (p) Cecil McBee (b) Jack DeJohnette (ds)
 キースのレコード・レビューはアート・ブレイキーの「バター・トウモロコシ娘」という3流作。ファンキー・バンドをそこそこに、スカウトされたチャールズ・ロイドのバンドで名を馳せた。枯葉をどうぞ。

(5)[LP]Keith Jarrett: Life Between The Exit Signs (1967, Vortex)

Keith Jarrett (p) Charlie Haden (b) Paul Motian (ds)
 同時期の初リーダ作。リリカルで美しい曲調が垣間見えるが、統一感のなさ、集中力の途切れ、このあたりが当時のプロデューサ(ジョージ・アヴァキャン)の限界だと思う。

(6)[LP]Keith Jarrett: Restoration Ruin (1967, Vortex)

Keith Jarrett (vo, g, hca, ss, reco, p, org, el-b, d, tamb, sistra, etc.)
 キースの驚くべき第二作。彼がフォーク・ソングに大きな関心を持っていたことがわかる。ソロでもそれが隠し味になっていると思う。しかし、ギターからサックスまで吹いて、唄うキースって。思念の空回りっぽい。

3.1970年ジャズ・ロックの狂乱そして1971年のEicherとの出会い

(7)Miles Davis: Live Evil(1970, Columbia)

Miles Davis (tp) Gary Bartz (ss, as) Keith Jarrett (el-p, org) John McLaughlin (g) Michael Henderson (el-b) Jack DeJohnette (ds) Airto Moreira (per)
 キースのもうひとつの隠し味がロック。当時のファンク・ジャズの最前線を走っていたマイルスバンドで身悶えしながら、電気オルガンを弾いている。早々に止めますね。

(7)[LP]Gary Burton and Keith Jarrett (1970, Atlantic)

Gary Burton (vib) Keith Jarrett (p, el-p, ss) Sam Brown (g) Steve Swallow (b) Bill Goodwin (ds)
 このアルバムからも彼のジャズ・ロック指向が見えてコケそうになる。時折見せるリリカルな音が残念感を募らせる。

(8)[LP]Keith Jarrett: Facing you (1971, ECM)

 これがアイヒャーとの出会い。ただ後年のソロと色合いが違って面白い。ゴスペルやフォークなど、彼の持っているいろいろな側面が万華鏡のように繰り出される。それが、ある一定の緊張感、ある一定の統一感のもとにまとめられている。プロデューサの質の違いを見せつけている。この後、ドイツでのソロ・ライヴの評価が高く、ケルン・コンサートへつながる。

4.グループ表現でのジャズ:カルテットそしてトリオ

 1970年代、American Quartet (Free jazz)とEuropean Quartet (post free)と呼ばれる2つのバンドをやっていた。前者のほとんどはimpulseレーベルでアイヒャーのプロデュース外。やはり玉石混合は否めない。後者はアイヒャー・プロデュース。よくまとまっているが、前者で時折見せる先鋭の矛先が見えない。プロデュースの光と影みたいなものだ。
#若いキースにOrnett ColemanのデビューをともにしたCharlie Haden、あのBill Evans trioのドラマーだったPaul Motianがつくという、豪華なバンドだけど、その個性が剥き出しになるのが難点。

(10)[LP]Keith Jarrett: Eyes Of The Heart (1976, ECM)

Keith Jarrett (p, ss, osi d, tamb) Dewey Redman (ts, tamb, maracas) Charlie Haden (b) Paul Motian (d, per)
 アイヒャープロデュースのAmerican Quartet 。LPジャケットが奇麗。長尺なので少しだけ。

(11) [LP]Keith Jarrett: My song (1977, ECM)

Jan Garbarek (ts, ss) Keith Jarrett (p, per) Palle Danielsson (b) Jon Christensen (ds)
 European Quartetの第二作。欧州の乾いた・冷たい大気を感じるでしょ。録音場所の湿度で大分とピアノの音が違うって、山下洋輔の欧州楽旅記に書いてあったのを思い出した。

(12) Keith Jarrett: At The Deer Head Inn (1991, ECM)

Keith Jarrett(p), Gary Peacock(b), Paul Motian(ds)
 ボクがキースを聴くのを止めてから、1983年からはじめた既存曲(スタンダード)のトリオ演奏。一見、普通のピアノ・トリオなのだけど、高技能者による次元の異なる美しい演奏集となっている。とても人気があって、とても沢山録音があるのだけど、ボクはあまり聴いていない。これは、故郷の「鹿頭」での演奏。実はドラムがJack DeJohnetteでなく、臨時雇のPaul Motian

5.Classcal music/modern musicへの関心
 1983年からECMはNew seriesとい名称でクラシックを扱っていて、シフとかクレメールなど多くの奏者のアルバムを出している。それ以前、1970年代前半からキースは現代曲のような取り組みをECMから出している。

(13)Keith Jarrett - Dmitri Shostakovich: 24 Preludes And Fugues Op. 87 (1991,ECM)

 キースによるショスタコーヴィッチ。キースのクラシックは蒸留水のような淡い演奏と云われるが如何でしょうか。ボクはあまり印象がないのです。

(14)Keith Jarrett - J.S. Bach: Das Wohltemperierte Klavier, Buch I  (1987, ECM)

 キースのバッハ。

(15)[LP]Keith Jarrett - Hymns/Spheres (1976, ECM) organ solo

 これはオマケ。キースのオルガン。

(16)Michala Petri/Keith Jarrett - J.S. Bach: Flute Sonatas (1992, RCA)

 これもオマケ。キースのハープシコードとペトリのリコーダー。

6.エピローグ:再びソロを幾つか
 長くなったのだけど、幾つかソロを聴いて終わりにしたいと思う。

(17) Keith Jarrett: Sun Bear Concerts (1976, ECM) piano solo

 ケルンコンサートの成功の後、1976年の日本ツアーの記録。当時10枚組のLPが京都・十字屋に置かれていたのを指を加えて見ていた記憶がある。来日時のインタビューの関心事は、あの演奏が(ケルンを含め)完全な即興かどうかということ。下らない質問だ。compositionのスタイルなんか聴き手には関係ない。だからキースも人を喰った回答をしたようで、かの油井正一センセは怒っていた(信用ならん、人間性が悪い)。だけど、ボクらは音楽を聴くのであって、人間性を聴くのではないよね。それよりも、街中では静かなホールのなかでも振動していて、真の静寂はない。箱根の山中で感じた静寂について語っていたことが、ECM惹句The most beautiful sound next to silenceとあわせて、興味深い。札幌での演奏を聴いてもらいます。

(18) Keith Jarrett: The Melody At Night, With You (1998, ECM) piano solo

 1990年以降のキースは作品数が急激に少なくなっている。1997年の吹き込みはない。神経性の病気に悩まされていたという。そんな時期に録音されたもので、柔らかな曲調は、かつてのエキセントリックな印象を払拭したものである。密かな愛調聴盤。

(19) Keith Jarrett: Rio (2011, ECM) piano solo

 ブラジルで吹き込まれた最新盤をどうぞ。1曲めこそFreeな曲調なのだけど、何となくブラジルでの演奏であるということが納得できるような演奏になっている。

[付記] ヴィデオについて
今回はLP/CDによる紹介なのだけど、演奏の様子をヴィデオで写したいと思う。無音ですが。
(1)Charles Lloyd Quartet Featuring Keith Jarrett(1966)
デビュー当時の映像
(2)Keith Jarrett: Vermont Solo (1977, VideoArts Music)
1970年代の映像。ヴァーモント郊外、屋外での演奏。
(3)Keith Jarrett: Standards (1987)
トリオでの演奏
(4)Keith Jarrett : Tokyo Solo 2002 (2002)