Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Bill Evans: Affinity (1978) 緩い気楽な一枚だけど

 webを見ていたら、スロヴェニアで発見されたネアンデルタール人が作った「骨のフルート」の音が流れていた。ただヒューっと息が抜けるような、もの哀しい音だったのだけど、心に引っかかった。音楽の始原的な営みは間違いなく呪術的なものだろうし、ある種の憑依状態へ移行するための手続きのようなものだろう。だから、気持ちの基層に土足で踏み込むような恐ろしさがある。どこかで読んだのだけど、三島由紀夫が、音楽のような恐ろしいものは聴かない、と云ったとか、という話も自ら制御できない感情の基底を脅かす存在だからであろう。

 最近、スピーカを変えたりしながら、ピアノの音を聴いていると、時間が飛んでしまって、そんな話が身近に感じてしまっている。気がつくと、ナニモノかに憑依されたように時間が散っている。断片化した時間のなかで、時として非現実的な場に浮かんでいる。

 だから職場では、心休まるような音楽を聴きたいと思ってしまった。Bill EvansのAffinity (1978)は、ボクにとって、心休まる緩い気楽な一枚。ジャズを聴きはじめた頃にラジオ番組で聴いて、その洒脱な感じが気に入って手にした。何よりもシールマンスのハーモニカに心惹かれた記憶がある。それに、ビル・エヴァンスフェンダー・ローズの具合もとてもいい。しっかりと70年代末の空気を彼のなかで消化し、違和感のない時代の音を造っている。優れた1枚じゃないだろうか。

 その頃はハービー・ハンコックチック・コリアキース・ジャレットを三大ピアニストと呼び、脚光を浴びせた風潮。すでにビル・エヴァンスは過去のヒト扱いだったけど、どうしてどうして。自らのリリシズムを失わないで、時代の音を奏でている。素敵だなあ、と思う。そして、このアルバムを遺してこの世を去った。今、気がついたのだけど、今のボクと同じ齢。早い死だとも思えるが、いやいや十分じゃないか、とも思えるのだ。

 仕事場でゆっくりと珈琲を呑みながら、安っぽいスピーカで、こんな音を聴きながら一日を終えつつある。そこに何ともない幸せな感じを感じること、それが嬉しいなあと思うのだ。

 

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Bill Evans: Affinity(1978, WB)
   1. I Do It For Your Love
   2. Sno' Peas
   3. This Is All I Ask
   4. The Days Of Wine And Roses
   5. Jesus' Last Ballad
   6. Tomato Kiss
   7. The Other Side Of Midnight
   8. Blue And Green
   9. Body & Soul
Bill Evans8p,el-p), Toots Thielemans (Harmonica), Larry Schneider(ts,fl), Marc Johnson(b), Eliot Zigmund(ds)