Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

櫻をみる昼下がりジャズ会(#21)ManhattanのVillage Vanguardを聴く


 Village Vanguardには何回行ったのだろうか?仕事の途中、ニューヨークに立ち寄ったことが10回弱くらいか。15年くらい前からのこと。よく憶えていない。一泊か二泊の滞在がほとんどで、ジャズ・クラブに立ち寄ることが楽しみ。World classのお上りさんの一員だから行くのはグリニッジ・ヴィレッジのヴィレッジ・ヴァンガードが中心。ジム・ホールポール・モチアンなどジャズ史上の著名奏者を聴いて、お上りさんはすっかり嬉しくなっている。
 ニューヨークに数多のジャズ・クラブがあるなかで、一貫した存在感を誇示しているのはヴィレッジ・バンガードが随一ではなかろうか。かのチャーリー・パーカーのあだ名を借用したBirdlandや随分録音に使われたVillage Gateもない。比較的新しく1997年にはボクも行って、化石のようなPete La Roca+Steve Kuhnを聴かせてくれたSweet Basilもない。寂しいことだ。そのなかでヴィレッジ・バンガードが空気のようにマンハッタンの南に存在していることは奇跡のようにも思える。

 はじめて入った時に驚いたのは、クラブの大きさ。とても小さくて、客の収容数は100人くらいじゃないかな。近所のBlue noteの半分くらい。日本のクラブよりも随分小さいこと。ここで、あの演奏、この演奏を行ったんだ、としみじみしてしまった。それに、昔の収録では皿やグラスの音が少なからず入っているけど、今は飲みものだけ。昔は料理を出したのだろうか。

 今までのジャズ会はボクの「最近の趣味」で周縁的なオトを流し続けたのだけど、所謂ジャズ的なオトをしっかりとかけてもいいかな、という気持ちになった。30年以上前に買いそろえたLPレコードは案外基本的なコレクションをカヴァーしているからね。引っ越してからLPレコードをかけることが楽しくなった。家に籠もってぼおっと山をみていることが好きだから。今は眼下に櫻も広がっているし。だから今回は、

  櫻をみる昼下がりジャズ会:ManhattanのVillage Vanguardを聴く

というテーマにした。

0. プロローグ

 ヴィレッジ・バンガードでのライヴ録音は沢山あるのだけど、やはりBill EvansScott LaFaroのセッションがトドメ、ではなかろうか?近年のマスターテープの暴露モノのリリースで生々しいライヴの様子が随分と伝わるようになった。最初は、このビル・エヴァンスのマスターテープそのものから。

(1) Bill Evans: The Complete Live at the Village Vanguard 1961
    Bill Evans(p), Scott LaFaro(b), Paul Motian(ds)

このテープから切り出されたアルバムが、

    Bill Evans: Sunday at the Village Vanguard (Riverside,1961)
    Bill Evans: Waltz for Debby (Riverside,1961)

同じマスターテープから二枚のLPレコードがリリースされ、一つがWaltz for Debbyでもう一つがこれ。改めてしっかり聴くとラファロはやはり凄いなあと思う。音のスケールがとても大きい。これが1961年ということを考えると驚いてしまう。ラファロはこの収録後、まもなく自動車事故で夭逝。伝説と化してしまった。エヴァンスもボクがジャズを聴きはじめた30年位前にクスリでぼろぼろになってあの世へ。だから2005年頃にボクが生き残ったモチアンをヴィレッジ・ヴァンガードで聴いたときは感慨ひとしお。そのモチアンも昨年末に逝ってしまった。光陰の速きことに、驚いてしまう。

1. 1950年代-1960年代

(3) [LP]Sonny Rollins: A Night At The Village Vanguard (1957, Blue Note)
Sonny Rollins(ts), Wilbure Ware(b), Elvin Jones(ds)

50年代の録音はもう少しあるかなあと思ったけど、定番中の定番しか見つからなかった。これもジャズクラブの雰囲気満点だし、ロリンズ絶好調のソロはやっぱりいいなあと思う。

(4)[LP]John Coltrane: Impressions (1961, Impulse)
John Coltrane(ss,ts) Eric Dolphy(as, bcl) McCoy Tyner(p) Jimmy Garrison, Reggie Workman(b), Elvin Jones(ds)

1960年代のVillage Vanguardで有名なセッションはエヴァンスのアレとコルトレーンのコレ。実はドルフィーを聴くためにあるような録音。ドルフィーの抽象性の高い音は一見(一聴?)過激にはきこえないが時代を抜けた響きがある。


(5)[LP]John Coltrane: Live at the Village Vanguard again (1966, Impulse)
John Coltrane(ss,ts) Pharaoh Sanders(ts) Alice Coltrane(p) Jimmy Garrison(b), Rashed Ali(ds)

5年の月日、コルトレーンは進化したのか壊れたのか、ボクには分からない。破壊が目的化したときの空しさを感じてしまうのはボクだけだろうか。

2.1970年代

音源を調べると、実は70年代から80年代が多いことがわかった。ロックに押されて低調と云われていたけど、案外大丈夫。

(6)[LP]Bill Evans: Re: Person I Know (1974, Fantasy)
Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Marty Morell(ds)

再びビル・エヴァンス。ベースが軽妙な感じになっている。エヴァンスは深みを増している。


(7)[LP]Hank Jones: The great jazz trio at the Village Vanguard(1977, East Wind)
Hank Jones(p), Ron Carter(b), Tony Williams(ds)

重量級のリズムに乗っかる老練なピアニスト。良い感じで軽い。


(8)[LP]Art Pepper: Live at the Village Vanguard(1977, Contemporary)
Art Pepper(as), George cables(p), George Mraz(b), Elvin Jones(ds)

50年代のチェット・ベイカー並に甘いアルトを吹いていたペッパーが、麻薬渦を乗り越え復帰。甘さを排したオトに賛否両論だった。


(9) [LP]Dave Liebman: Pendulum (1978, Artist House)
Dave Liebman(ts,ss), Randy Brecker(tp), Richie Beirach(p), Frabk Tusa(b), Al Foster(ds)

1973年のマイルス・バンドの奏者として来日。現在まで、テナー奏者の最高峰のひとり。求道的。

 

(10) [LP]Woody Shaw: Stepping Stones (1978, Columbia)
Woody Shaw(Cor, flh), Carter Jefferson(ts,ss), Onaje Allan Gumbs(p), Clint Houston(b),Victor Lewis(ds)

ボクが最初に聴いたのは京都今出川のジャズ喫茶。突き抜けるオトが格好イイ。でも、最後はエイズになって、弱視のためNYの地下鉄に転落。腕を切断という、トランペッターとしては悲劇的な最期。


(11)[LP]Jim Hall and Red Mitchell(1978, artist House)
Jim Hall(g), Red Mitchell(b)
これはVillage Vanguardの近所にあったSweet Basilでのライヴ。ちょっと箸休めでしょ。

3. 1980年代

(12) [LD]Michel Petrucciani: Live at the Village Vanguard(1985)
Michel Petrucciani(p),Palle Danielsson(b),Elliot Zigmund(ds), Jim Hall(g)

最初にヴィデオを。実際よりも広く見えるのが不思議。ペトルチアーニから漂う欧州の薫り、は気持ち良い。

(13)Keith Jarrett: Nude Ants (1980,ECM)
Keith Jarrett (piano, timbales, percussion),Jan Garbarek (ss,ts), Palle Danielsson(b),Jon Christensen(ds)
これはMy songを吹き込んだヨーロッパメンバーとのカルテット。耽美的な色彩とロック的なリズムが交じり、面白い。

(14)George Adams: Live At The Village Vanguard Vol.2 (1983,Soul note)
George Adams (ts,fl), Don Pullen(p), Cameron Brown(b), Dannie Richmond(ds)

キツメ、臭めのテナー。打楽器的なピアノのリズムがよい。


(15)Joe Henderson: The State of the Tenor/Live At The Village Vanguard (1985, Blue Note)
Joe Henderson(ts), Ron carter(b), Al foster(ds)

改めて聴くと、ロリンズ的なオトだなあと思う。

4.1990年代以降

(16)Geri Allen: Live At The Village Vanguard (1991,DIW)
Geri Allen(p), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds)

理知的なピアノと云われるが、若干、肩が凝るとも云える。ときとしてハッとするフレーズが出るので、期待して買うのだけど。


(17)大西順子: Live At The Village Vanguard(1994, Somthin' Else)
大西順子(p), Reginald Veal(b), Herlin Riley(ds)

この時代になると日本人登場。暫し休んでいたヒトだけど、最近復活

(18)Joshua Redman: Spirit Of The Moment/Live At The Village Vanguard(1995, WEA)
Joshua Redman (ts), Peter Martin (p), Christopher Thomas(b), Brian Blade (ds)

テナー・サックスの次世代のホープと云われたヒトだけど、今はどうなのだろうか?ボクはあまり知らない。これはいい演奏だと思う。


(19)Paul Motian: You Took The Words Right Out Of My Heart(1995, Bamboo)
Paul Motian(g),  Bill Frisell(g), Joe Lovano(ts)

ビル・エヴァンス・トリオのドラマー。エヴァンスの後、キースともプレイしていた。1970年代の後半、キースと別れてから自作をボチボツ。90年代以降に大きな存在感となった。老境にさしかかって、なんとも未来的な浮遊音。昨年、逝去。ボクは7年位前にヴィレッジ・ヴァンガードで聴いたときは、感慨ひとしおだった。あのエヴァンス・トリオのドラマーだからね。

(20)Chucho Valdes: Live At The Village Vanguard(1999,Blue note)

キューバの超絶技巧のピアニスト。ピアノは打楽器・リズム楽器なり

(21)Fred Hersch: Live At The Village Vanguard (2002)
Fred Hersch(p), Drew Gress(b), Nasheet Waits(ds)

美しいピアノで締めくくりましょう。

5.エピローグ

実はビル・エヴァンス晩年のヴィレッジヴァンガードのライヴ録音が出ているのを知ってしまった。ジャズ会の前日に発注。間に合うかな?間に合ったら聴きましょう。ベースはMarc Johnson。ビル・エヴァンスではじまって、ビル・エヴァンスで終わるジャズ会を狙ったのだけど。ベースの個性を聴けたらね。