Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Gil Evans, Lee Konitz: Heros(1980) 技巧でない巧さ

 1990年に発売されたアルバム。その存在は知っていたのだけど店頭では見かけなかったし、amazonで調べてもいつも高価。だから今まで手が出なかった。もう一枚のAnti-heroとあわせて小さな棘のように刺さっていた。だから、つい先日ディスクユニオン・ジャズ館で常識的な中古価格で二枚目のAnti-herosを手に入れて、小躍りした。そうなると1枚目のHerosが気になった。面白いもので、日本のamazonの中古価格は相変わらずなのだけど、米amazonの価格がいつの間にか安価に。あわてて購入した。気になってから10年くらいたって入手できた。

 入手してから分かったのは、録音は1980年であり最晩年ではない。盛んにオーケストラの活動をやっていた時分。ボクが好きなスティ−ヴ・レイシーとのデュオ「Paris Blues」(遺作じゃないかな)よりも古い。プロデューサーは当時Artist Houseを主宰していたJohn Snyder(なんと健在)。なんとも懐かしいCreditがあった。つまり、あのArtist Houseレーベル(1977-1982)のために録音された音源じゃないかな。二枚の音盤をみながら、音を聴く前になんとも懐かしい感覚。Artist HouseのLPレコードは大好きだったから。

 さて肝心の中身。ニューヨークでのライヴ録音であり、小さなホール(じゃないかな)での淡々とした音の交歓が記録されている。スティ−ヴ・レイシーとギル・エヴァンスのデュオで感じたような濃密な空気感、それも暗い冬の空を沈殿していくような内向性、のようなものでない。ただただ、音を出し合いながら、曲の細部を手繰り寄せるような会話。

 ギル・エヴァンスのピアノは、モンク程は頓狂でないのだけど、往々にしてミンガスを取り上げるように、ややもすれば頓狂に聴こえなくはない、ヒップなピアノだと思う。その隙間だらけの音を、レイシーはネットリと漆喰みたいに埋めていったのだけど、コニッツは同じように隙間の多い音で返している。二人とも淡々としたオトに強い表現意思を込めているので、流麗なプレイとの対極、

  技巧でない巧さ

をみせている。だからアルバムを鳴らすと、音の存在感はとても大きく、そして終わらせると思わせぬうちに音は途切れる。そして無音の闇に放り出されるような印象。

 リー・コニッツのデュオはどれも好きだ。中途半端な感情は薄く、冷たく宙を切っていくような音の流れは、書体の墨の撥ねを眺めるような快感。昨年、マンハッタンで聴いたときも、そんな感じだった。クアルテットだったけど、ピーコックとのデュオのように響いていた。

 それにしても、ギルがいた時代は矢の如く消え去った、としみじみしてしまった。

 


-------------------------------------------------
Gil Evans, Lee Konitz: Heros(Remark, 1980)
   1. Prince Of Darkness
   2. Reincarnation Of A Lovebird
   3. Aprilling
   4. What Am I Here For
   5. All The Things You Are
   6. Prelude N° 20 In C Minor, Opus 28
   7. Blues Improvisation / Zee Zee
   8. Lover Man (Oh, Where Can You Be ?)
Gil Evans(as), Lee Konitz(as)