Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

渋谷毅・石渡明廣:月の鳥 (2008) 隙間だらけの音だけど

 名古屋に来ている。いろいろな街に行くのだけど、一番活気があるように思える街。だから仕事の会食を終えた後、早々に疲れて眠ってしまった。夢の中でも、大きな荷物を引っ張って歩いている。歩道には所々高い段差があって、そこを通る度にバッグの車輪が大きな音を立てている。そして冷たい色をした名古屋駅の前に立っているのだけど、深夜だから列車がないことを承知して立ってるのは何故だろうか。寒い。

 寒い気持ちだけを残して、なにか悄然としたような呆け方をしている。ただぼんやりと聴いているのは、先日、ディスクユニオンで入手した渋谷毅石渡明廣のデュオ。

 梅津和時が気になっている時期があった。ドイツ・ドナウエッシンゲン音楽祭での原田依幸とのデュオが強烈だったから。1980年のことである。その梅津和時のレギュラーバンドに早川岳晴というベース奏者がいた。その変態的なグルーブ感にも痺れたりしていた。とにかくヘン。その早川岳晴の初リーダ作がSALTというLPレコード。長くなったけど、そこでのギター奏者が石渡明廣エフェクターが効いたアナーキーでヒステリックな音に、これまた痺れていたのが30年くらい前の話。

 その頃読んだスイング・ジャーナル誌には、アケタ氏の連載があって、コマーシャルな仕事をしなくて困窮している石渡明廣の話が書いてあった。米が買えない。そして空腹のあまり食べ物を万引きした、ような話しが哀しく可笑しく書いてあったような記憶がある(間違っていたらゴメン)。確かに、喜んでアレを聴くヒトは多くないよなあ、と妙に納得してしまった。そんな音や記事から喚起されたイメージが海馬体の奥底に残っているのだ。

 だから脱力的美音の渋谷毅とのデュオ、を見かけて、戸惑ってしまった。ということで、殆ど30年振りに石渡明廣を聴いてみた。驚いたことに隙間だらけの音だけど、その脱力した風情が心地良い。若い頃だったら、ダルくて聴いていられないだろうな。そう同世代の彼と同じく、ボクもすっかりトシをとってしまったのだ。

 そんな斜めに構えたまま加齢したような石渡のギターが添えられた渋谷毅のピアノは相変わらず脱力系美音。熱くならない奏者達が好きなトシゴロだなあと改めて思った。

 

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渋谷毅石渡明廣:月の鳥 (2006、キング)
   1 Talk About Walking Through
   2 月の鳥
   3 影響の記憶
   4 Sing In Exit
   5 Body And Soul
   6 Obscure Steps
   7 Mr. Monster
   8 深く、ゆっくり、上へ
渋谷毅(p)、石渡明廣(g)