Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Nik Bartsch: Holon (2007): これから雨や雪の日が続くから、そしてアーサー・ケストラー

Nik Bartsch: Holon (2007, ECM)
   1. Modul 42
   2. Modul 41_17
   3. Modul 39_8
   4. Modul 46
   5. Modul 45
   6. Modul 44
Nik Bartsch(p),Sha (bcl, as), Bjorn Meyer (b), Kasper Rast(ds), Andi Pupato (per)

 このCDはいつだったか、随分前からの友人でSan DiegoのFM曲KSDSで素人DJをやっているBirdmanことNormからもらったもの。なかなか趣味がいい奴でアメリカ人なのにECMが大好きなのだ。結構長い間放置していたのだけど、聴いてみるとスッと入ってきた。最近、Reichを聴いていて、Different trainとかに妙に惹き込まれたりしているので、ミニマル音楽を聴く「回廊」が頭の中に出来たのかもしれない。退屈さと紙一重のリズムやフレーズの繰り返し。記憶の中の音の残滓と新たに飛び込む音の微妙なうねり、差分が強調されたような聴こえ方、時間感覚の喪失、そんな感じかなあ。Reichを聴いていると、ある種のノスタルジイに近い感覚が沸き上がってくるのは何故だろうか、っていつも不思議に思っている。胎内にいるときの母親の血流、赤子のときの雨垂れ、雪深い校舎で炊かれたダルマストーブの上で沸騰する薬缶、そんな音たちが感情の基層にいるのかもしれない。

 そんな音楽だから、これから雨や雪の日が続く北陸の片隅で聴くと丁度よいのかもしれない。独りで外を眺めていると、単純な現象の重層的な重なりが複雑な事象を創り上げていく様子がよく見える。このHolonを聴いていても、終わりなき、はじまりなき音の連鎖が、無限の円環のような印象を創り出している。あえて正面から聴くのではなくて、意図的に背景音として聴いていると、窓の外を流れていく雲と同じような、淡い記憶を残していく。

 それにしてもHolonという名前、ちょうど学生のころに面白がって買った松岡正剛の雑誌「遊」の工作舎出版案内に毎週のように出ていたなあ。懐かしい。どんな意味か知らないのだけど、アーサー・ケストラーの著書だったか。調べてみると、ハンガリーのユダヤ人で、アシュケナージ(東欧のユダヤ人)の出自がハザール人(蒙古高原からウクライナステップ地帯に移動してハザール帝国を作った民族、ユダヤ教に集団改宗したことで有名)という主張を行った人だとか。一枚のCDを聴きながら、ボクのなかで30年ほどの記憶の旅を行なってしまった時雨の夕暮れなのだ。気持ちよし。