Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Brad mehldau, Kevin Hays, Patrick Zimmerli :Modern Music (2011):20世紀に背を向ける孤独感


Brad mehldau, Kevin Hays, Patrick Zimmerli :Modern Music (2011, Nonesuch)
   1. Crazy Quilt (Patrick Zimmerli)
   2. Unrequited (Brad mehldau)
   3. Generatrix  (Patrick Zimmerli)
   4. Celtic Folk Melody  (Patrick Zimmerli)
   5. Excerpt From Music For 18 Musicians (Steve Reich)
   6. Lonely Woman (Ornette Coleman)
   7. Modern Music  (Patrick Zimmerli)
   8. Elegia (Kevin Hays)
   9. Excerpt From String Quartet #5 (Philip Grass)
Brad mehldau(p), Kevin Hays(p),Patrick Zimmerli(arr)

 20世紀も最後の20年となった頃、modern ageの終焉があたりまえのように語られていた。そしてボクたちがあたりまえのように思っていた20世紀が流れるように終わって21世紀がはじまって、爾来10年。何が起こっているのだろうか。

 まだ見たことのない世界へ投げ出されているような不安感。先の大戦のなかで破壊的に社会的な矛盾が緩和され、コミュニズムの外圧のもとに、稀にみる均質な社会、所謂「西側」社会ができあがった。だけど1980年代末のマルタ会談からベルリンの壁の崩壊によるコミュニズムの自壊、Globalizationという支配者が見えぬ新たな帝国の睥睨のもとで、かつての生ぬるくも心地良い社会から離脱しつつあるのだ。野放図な資本主義が新しいカタチで世界を覆いつつある。

 だから20世紀に背中を向けることの孤独感のなかで、耐えられなくなっているのではないか。

 このアルバムの「Moden Music」というタイトルをみたときに、ボク達が背中を向けている20世紀への挽歌のように感じた。Modernというコトバに憧憬をもった時代は遙か彼方に流れ去り、post modenなんてハヤリ・コトバに導かれた先がこれか、という違和感。そんな乾ききったノスタルジイ。

 このアルバムはとても美しい。ジャズともクラシックとも言い難い、Contemporary musicとしか表現できない音楽が投げ出されている。メルドーの透明度が高く、輪郭が明瞭な、そしてひんやりした音が弾けていく。その音の軌跡はブラウン運動のように記憶へ留められないほど奔放にきこえる。それにヘイズのやや温度が高く温もりのある音が、その周りで漂っている。とりわけReichの曲から粒状の音が弾け出る様は、なにか流水をみるように視覚的ですらある。だけど、この美しさには何かしら既視感がつきまとっている。20世紀の音楽の美しさを純化したような感覚、そしてそれに手を振り別れを告げるような愛惜の情、掌からこぼれてしまったものへの挽歌。

 さようなら、と誰に云っているのだろうか。このアルバムが届いて数日、聴き続けているのだけど分からない。ただ美麗な音のなかで悄然としているのだ。そして、ピアノ音楽、20世紀の音楽を聴く愉悦に包まれている。

追記:クラシックでのカプスーチンの曲のような流れ、そしてこのアルバムのような流れが無関係とは思えない。どんな方向へ向かっていくのだろうか。Movementという程でないことが、残念なのだけど。