Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Jim Hall: Dedication and inspiration (1993) 気が抜けた午後のConversation with myself

Jim Hall: Dedication and inspiration (1993, Telarc)
   1.Whistle Stop
   2.Hawk
   3.Canto Nostalgico
   4.Why Not Dance?
   5.Joao
   6.Seseragi
   7.All The Things You Are
   8.Bluesography
   9.Miro
  10.Monet
  11.Matisse
  12.In A Sentimental Mood
  13.Street Dance
Jim Hall(g)

  Conversation with myselfというコトバが好きだ。ビル・エヴァンスのアルバムでピアノ・ソロ。正確に云うと、二重録音による独り二重奏。だからConversation with myself、邦題で「自己との対話」。ビル・エヴァンスのような内省的なヒトが演ると、二乗の内省音楽になる。ちょっと行き過ぎなので、彼のConversation with myselfはあまり聴かない。

 ボクが好きなのは Conversation with myselfというコトバ。山に登ったり、長い距離を走ったりすることが好きなのは、この Conversation with myselfが好きだから、ということが何となく分かってきたから。独りであることが好きなのだけど、独りで居ることが必ずしも好きでない、厄介な性格。その折り合いがつくのは、山に登ったり、走っているとき。その間、 Conversation with myselfをやっているのだなあ、と思う。だから独りである時間が完璧に楽しくなるのだ。友人と登ったり、走ったりしても、自分のなかでは独りの色がとても強い。Conversation with myselfを繰り返している。

 この数週間いろいろなことがあって、気が抜けている。そんな午後、独りでジム・ホールのDedication and inspirationを聴いている。最近のアルバムだよなあ、と思ってみたら、1993年録音、1994年発売。ボクの頭の中で、1991年を境に時間がぴたっと止まっていることが改めて確認できた。マイルスが死んで進化論的な動き(奏者のスタイルを変えなきゃいけないという衝動)がなくなったという事実、そしてボク自身が仕事に集中していった時期にも重なる。

 このDedication and inspirationはジム・ホールが多重録音でこさえたアルバム。ジム・ホールはとても好きなギター奏者でビル・エヴァンスと似た香気を放つ音世界を持っている。白人固有の、粘り気がないさっぱりした音。熱くならないので、低い温度感が心地良いのだけど、ECMほどは低くなく、暖かい感じ。ビル・エヴァンスよりもやや暖かい。人肌の酒(金澤のヒトには黒帯と云いたい)のような、自己主張が低めのように見えて、気がつくと吞まれているような、である。

 ジム・ホールの音って1950年代のPacific Jazzの時代からそう。数年前にVillage Vanguardで聴いたときも変わっていなかった。1930年生まれだから当時80歳前の彼はヨボヨボなのだけど、脱力したプレイはなかなか楽しいものだった。ジム・ホールが好きなのは、内省的な演奏なのだけど、自己陶酔のような印象を全く与えないこと。訥々と語るような印象を与える。よく聴くと、それなりに決して寡黙な演奏をしている訳ではないのだけど。なんでだろう。

 だから、このジム・ホールのConversation with myselfも淡泊な味わいで、淡麗な酒のよう。今日のように、疲れて気が抜けた午後にはぴったりの音楽なのだ。

この時期、Telarcから出ているアルバムは何枚か持っているのだけど、どれもいい。ただこのアルバムは純度が高いジム・ホール世界を聴くことができる、という意味で無比なのだ。