Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

Fazil Say & Patricia Kopatchinskaja (2009) バルカンの街角に立つと


Fazil Say & Patricia Kopatchinskaja (2009, Naive)
    1. Beethoven: Violin Sonata No. 9 in A Major, opus 47 "Kreutzer"
    2. Ravel: Violin Sonata in G Major
    3. Bartok: Romanian Dances
    4. Fazil Say: Violin Sonata, opus 7
Fazil Say(p), Patricia Kopatchinskaja(vln)

 ボクは技術を生業としているのだけど、高校生の頃は文系に進もうか随分と悩んだものだ。山川出版社の分厚い歴史地図帳なんかも頭に入っていて、19世紀に入ってからのトルコの領土縮退に随分と心を痛めたものだ(なぜか?)。ただ何となくトルコに興味を持っていたからからなのだけど。随分、トルコ史の本は読んだなあ。

 このアルバムはイスタンブールで買ってきたもの。トルコといえば、唯一人知っている音楽家はサイだから。といっても、昨年、金沢公演を聴くまで知らなかったので、なんとも底の浅い話なのだけど。

 例によって、テキトーに手にしたのだけど、コレがなかなか良かった。Patricia Kopatchinskajaは、パトリツィア・コパチンスカヤというそう。モルドヴァ出身のヴァイオリン奏者。モルドヴァは、ルーマニアウクライナに挟まれた旧ソヴィエトから独立した共和国。旧トルコ帝国のバルカン領土の北東端に位置し(トルコがクリミアハン国の宗主権を失った後は)、その後、ロシア、ルーマニア、ソヴィエトと行ったり来たりした地帯。ポーランドの東部国境とか、フランスのアルザスのような場所。南ウクライナステップ地帯に続いているので、アジア系遊牧民の襲来があったり、とてもエスニックな香りの土地なのだろうと思う。彼女の演奏も、なんか激情ほとばしるような。ほとばしる、の原義そのもの、のような濃厚さ。

 そんなヴァイオリン奏者と、楷書というよりは奔放な草書のようなピアノ奏者・サイのデュオ。いろいろな音を繰り出して、感情の奥底に突き刺さるような快感を求めてくるような演奏。たぶん原曲のイメエジと随分違うのだろうな。ラヴェルバルトークルーマニア舞曲!)そしてサイの自作自演曲の流れは、なんとも音の快感の玉手箱。きっと正当なクラシックファンは眉をひそめるのでは?

 なんとなく昔眺めた山川の地図帳に出ていた、かのトルコ帝国の故地・バルカンの街角に立つと、そんな音が風に乗って流れてくるのだろうな。そんなことを思いながら、深く呑みながら聴くのに相応しい一枚だと思う。