Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

エスニックJAZZ会@花のアトリエこすもす


 この1年半、JAZZ会と称して、様々なテーマでジャズを中心とした音楽を聴く会をやっている。今は少々事情があって休んでいるのだけど、音のいろいろな側面を切り出して楽しむようなコトが思いの外、楽しい。すっかり海馬体が弱っているので、再びノイロンに通電しているような不思議な感覚がある。20年、30年振りに聴くアルバムも随分あったしね。
 今回のジャズ会は久々の出張JAZZ会で、前回同様花のアトリエこすもすを借りることになっている。テーマはエスニック。といっても、音のエキゾティシズムの観光旅行、といった感覚で、いろいろな土地の音を巡ってみたい。本当は密教の声明あたりからはじめたかったのだけど、まあ手持ちの音源をかき集めて、プログラムを作ってみた。観光旅行だから、エキゾティシズム奥底には、入って行かない。そこは虎穴以上に危ない場所かもしれないから。虎子は得られないのだけど、なまぬるい風から沸き上がる香料を嗅ぐような時間が楽しめればよいと思った。
 冒頭の写真はイスタンブールのエジプト市場。ここで求めた14種類の香料セットを超えた匂い、が楽しめたらいいなあ。

1.内なるエキゾティシズムへの遊覧:日本
(1)清水靖晃:Dementos(1988)


清水靖晃はちょっと突っ張っているうちに、その音が日本からはみ出してしまった。そのニセ(フェイク)なエスニック感覚は、自らを日本から遠ざけているようで、その違和感が日本そのもであるような不思議な音の流れを作っている。

(2)近藤等則: The 吉原(2003)


近藤等則は、SのM嬢の大学の先輩。S的であるのだけど、その音楽はヘンタイ的とも云える。オカシイ。かつて浅川マキなんかと共演していたけど、早いうちから日本から飛び出ていて、NYCで最初のアルバムを出している。そんな彼も不惑を越えると、こんな日本回帰。端唄(短い歌謡の総称。1920年代までは小唄も端唄の名で呼ばれていたが、その後はっきりと区別される。小唄は爪弾きであるのに対して端唄は撥を使う。)の栄芝師匠との共演。エドはエロだから、そんな感覚への回帰は内なるエキゾティシズムそのもの。

(3)矢野顕子:長月 神無月(1976)


日本の童謡からは、そこはかとなくある時代への憧憬が沸き立つ。もう見えなくなった微かな古。そんな感傷をぶっ飛ばす矢野顕子の唄・ピアノは今と変わらない35年前のもの。とんでもない小娘。

(4)里国隆:あがれゆぬはる加那


方言もそうなのだけど、中央から離れて遠くへいくと、消え去った日本の基層のようなモノ・コトバが残っていたりする。里国隆は奄美の旅芸人。那覇の路上で長らく唄っていたと。日本の周縁の芸能なのだけど、なんだか懐かしい味わいがあるのは、それ故のことだろうか。

(5)知名定男・ねーねーず 瀬戸内海音楽祭 Vol.1 (1990)


これは今治でのライヴ収録。海洋民は潮の流れに沿って、日本の外縁でつながっている。そんなことを想いださせるような音楽祭が、当地出身の近藤等則によって企画された、と。瀬戸内から沖縄そしてインドネシアまで、糸満漁民の動きのような音楽祭。企画した近藤が古の技術を司った鍛冶屋の出身というのが、テクノロジと音楽の接点のようで面白い。

(6)知名定男・徳原清文:島や唄遊び(1992)


知名定男をもう一つ。

2.更なる古の頃に稲作の民がいた場所:河南とその果て
(7)閔惠芬:江河水(2004)


北京にはじめて行った時に求めたCD。適当に手にした。二胡の奏者で、中国音楽家協会副主席!江蘇省の出身だから、揚子江の河口域。東支那海の対岸。このあたりから南方は呉国で稲作の民。ボクにとって大陸はエキゾティシズムというより、エキセントリックな土地なのだけど、南に行くほどそれが薄れていくような気がする。

(8)タイのお坊さん:タイの説教(かなあ)
これはタイの大学生協にあったもので内容不明。読経か説教。揚子江から、ここまで南に下ると、文化の基層が日本にとても近いように感じるのは不思議な感じ。そして、その懐かしい感情がボクらがなくしてしまったモノに対するものだ、とすぐに気がつくだろう。

(9)Nguye^n Le^:Tales From Vie^t-Nam (1997?)


ヴェトナム出身のジャズ・ギタリスト。ヴェトナム・フュージョンの匂いはなかなか麗しい。ヴェトナムは思った以上に香港とかに近い印象。タイよりは鋭い感じだった。もっともバンコクと比べて、ハノイは随分懐かしい「東南アジア」で一杯だったけど。それに中国以上に赤い星が目立ったね。ホーおじさんも、市井で健在だったし。

3.インドはネタなしなのでトルコ周辺へ
ボクのなかのエキゾティシズムのイメエジは、若い頃に読んだ澁澤龍彦の「高丘親王航海記」から喚起されている。その高丘親王もせいぜいマレー半島辺りまでしか行けなくて、念願の天竺には行けなかった模様。合掌。「高丘親王航海記」では藤原薬子との想い出が仄かなエロティシズム。そんな感情を喚起するのは、やはりアジア・モンスーン地帯共通の湿潤な空気が前提ではなかろうか。インドを越え、ペルシャ湾の向こうは同じアジアと云えども地勢的なアジアであって、もはや異質な乾燥地帯が広がっている。その先っぽが新疆から蒙古まで続いているのだから、日本から遠いトコロという訳でもないのだけど。

(10)Kerim Sureleri :Kur'an


イスタンブールで求めたコーラン。ボクが行ったときはラマダン(断食月)で、早朝の開始の号令、日没後の終わりの号令(のような)祈りが大音響で響いていた。どうもきれいなCDの音で聴くと気分が出ないことも事実。大音響の歪んだスピーカの音がイスラム圏の音風景。

(11)Mikail Aslan:Dersim Ermeni Halk Sarkilari(2010)


Mikail Aslanは在独のクルド人音楽家。世界最大の少数民族と言われるクルド人はトルコ政府とも摩擦が絶えなく、Mikail Aslanもドイツに逃れた様子。それでもCDは発売禁止じゃないみたい。ジャズ奏者との共演もしているようで、なんとも不思議な魅力を感じさせる。

(12)Trio Tzane:Chants traditionnels des Balkans "Gaitani"(2009)


 このTrio Tzaneという女性3人グループのGaitaniはジャケットが素敵だったので掴んだ一枚。一曲目Snoshti Sedenki Kladohmeは、ブルガリアン・ヴォイスと似たような曲想。非西洋的な東方音楽の玉手箱のようなCD。声量や技量はやや不安定な印象があって、歌唱力で圧倒するようなグループではない。ただ曲の選定や、曲が持っている東方の空気、それも西方から見える東方の空気をよく表していて、窓辺からささやかに吹き込むような淡い感じが気持ちよい。パリで結成されたフランス人、トルコ人、ギリシャ人のグループなので、民族音楽が持つある種のクセが消え、淡いエキゾティシズムが汎世界的な香りを与えているのだろう。ブリジット・フォンティーヌの音楽と通底する世界のように感じる。なんとなく山勘でこのCDを掴んできた事がとても嬉しくて、そんなつまらない事に鼻をふくらませているのだ。無論、独り暮らしだから膨らんだ鼻は誰にも見えないのだけどね。

(13)The Bulgarian State Radio & Television Female Choir: Le Myste`re Des Voix Bulgares(1980年代?)


ブルガリアスラヴ人の国なのだけど、来歴は非欧州的。ブルガル族は、フン族マジャール族のようなアジア系遊牧民バルカン半島に一大帝国を築いた。マジャール族は同化せずにハンガリー人となったのだけど、ブルガル族はスラヴ族に溶け込んでしまった。長いオスマン・トルコ時代もあって、ブルガリアとトルコは良く似ているそうだ、って耳知識があったのだけど、ひょんなことで先日、味で確かめてしまった。トルコのお菓子:ターキッシュ・デライトとブルガリアのお菓子:ブルガリアン・デライトが同じモノだったのだ。トルコのほうがちょっと美味かったけどね。

4.欧州の周縁へ
(14)Celtic Legacy - Windham Hill Classics (2000)


これはマンチェスターのCD屋で買ったモノだったか。レーベルはかの米ウィンダム・ヒルだけど。ケルト人(アイルランドブルトン,在ボストンの移民)とは仕事をしたことがあって、小柄、酒好き、シニカル、とてもよく気があった。彼らは白人だけど、欧州のある種のマイナリティであり、ある種のエキゾティシズムで語られる存在。同じ感覚で極東の我らが語るのはヘンな感じだけど。

(15)Bjork:Gling-Glo(1990)


ビヨークのデビュー前のジャズアルバム。破天荒なケルト風ジャズ。

(16)Anna Maria Jopek:Upojenie(2002)


昨年、金沢にも来ていたポーランドの歌姫。ポーランド人はロシア人と同じスラヴ系だけど、なんとなく女性が綺麗なイメージがあった。同世代のナスターシャ・キンスキーのイメージかもしれないけど。然るに、一昨年に米国で会議に同席した教授、それにこのジョペック嬢、ともに美女なのだけど背面から上腕の逞しさには驚いてしまった。逞しい二の腕を想像して聴いてください。

(17)George Mraz:Morava  (2000)

           
George Mraz (b), Zuzana Lapcikova (vo), Emil Viklicky (p), Billy Hart (ds)
チェコ出身のベーシストのアルバム。どちらかというと、欧州風ではない正統的なジャズ芸風なのだけど、これは故郷のチェコの音楽を取り上げた一枚。Moravaはモラヴィア地方のこと。

5.日本からは欧州の向こうに見える遠きアフリカ
さすがに書き疲れてきたので、ちょっとだけメモ。アフリカって音楽的には好きなのだけど、アジアと比べてイメエジが薄いことを改めて感じた。

(18)Lionel Loueke:Mwaliko(2010)


 Lionel Loueke (g,vo), Esperanza Spalding(b,vo) ,Massimo Biolcati (b), Ferenc Nemeth (ds),Angelique Kidjo (vo)
アフリアのギタリスト。最近のアフリカのジャズ奏者の温度感は抜群。これこそcoolだよなあ。

(19)Kora Jazz Trio  Part Two (2005)


アフリカの民族楽器コラで弾くジャズ。なんとも不思議な味わい。

(20)Jali Musa Jawara:Soubindoor(1988)


1980年代の終わり、プラザ合意後の円高不況を乗り越え、まさに日本がバブルに突入するその頃、ささやかにアフリカ音楽ブームだったことを覚えていますか?学校給食を食べていた人はともかく。世田谷の美術館でコラの演奏を聴いたあとの即売会じゃなかったかなあ。ちょっとしたオシャレだったのです。

(21)Richard Bona:Toto Bona Lokua(2004)


アフリカのベーシスト。(17)のLionel Louekeと同じく抜群のジャズ。

6.酔っぱらいを冷ます音楽はアルゼンチン
(22)Sebastian Macchi,Claudio Bolzani,Fernando Silva: Luz De Agua (2005)
まあ皆、酔っ払っている頃だろうから、冷たな水のような爽やかな音楽を