Kanazawa Jazz Days

Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

伊藤大輔@galetasso こんな時だけど、こんな時だから


一昨日の泥酔ですっかり台無しの一日だったけど、最後の最後で大逆転。

昨夜、近所のバーgaletassoではじめて(だそうだ)のライヴがあった。伊藤大輔さんというヴォーカリスト。ジャズのフィールド,だそうだ。しらない唄い手(ほとんど知らないヒトばかりなのだけど)だけど、なんの予備知識なしに聴いたのだけど、とてもとても人の声に魅せられる夜になった。マイク一本とループマシンというエッフェクタで畳み込まれていく音の重なりの空間の深さ,透き通る時間の感覚。驚いてしまった。

(あえて声でなく)音の出し方は、ボビー・マクファーリンに近い感じ。器楽的な音が巧いし、なかなか聴かせる。それをループマシンで重ねていくので、なんとも不思議な音世界になっている。ときとして自分の音に和するときの微妙な音階の差が通奏低音のようなうねりを呼んでいる。ボクはボビー・マクファーリンの音はあまり好きでない。器楽的な音は乾燥していたほうが広く・深く響くと思うのだけど、かなり湿っていて、ブルージーなテイストが粘り気になっているから。だから聴かない。伊藤大輔さんの音は程よく乾いていて、好みによく合う。だから技巧に魅せられるというより、音が気持ちに入り込んでくるような感じ。

ジャズのスタンダード(sunny side of the streetとか),お決まりのようなビートルズナンバーだけでなく、ミルトンの曲を取り上げていたので嬉しかった。ミルトンの曲のカヴァーって、あまり沢山ないように思う。若きミルトンの美声との比較になると辛いからね。だけど昨夜は彼の曲としてしっかり聴かせてくれた。

あまり声量もないみたいなので、昨日のような狭い空間でのライヴが丁度いいのではないかな。唄い手と聴き手の距離が近くて、物理的にも心理的にも。この彼のthird album「紡」のジャケットのように、小さなバーのドアを開いて、シルクハットを被って彼はやってきて、皆の心を少しだけ、そしてしっかりと震わせて、また同じドアから帰っていった。ありがとう、伊藤さん、それにニキさん、ニシカワさんもありがとう。

[追記のようなこと] 震災の余波で唄う機会が減っている様子。戸惑いのなかで唄っているようにも思った。だけど唄い手にできることは唄うことしかない。ボクのような技術屋にできることがモノ作りでしかないように。こんな時だけど、いやこんな時だから唄い手が唄い、技術屋がモノを作り、生きている人間が大きな傷を直していくしかない。だから飛び出た頭を叩くような自粛の正義は如何なものかなあ、と思う。むきだしの正義にあがなうことは難しいからね。

伊藤大輔:紡(2009)

1. 紡音♯1 水鏡 Reflections in the Water
2. Scaborough Fair〜Norwegian Wood
3. 紡音♯2 夜 A Quiet Night
4. Summertime
5. 紡音♯3 太陽の輪郭 The Limb of the Sun
6. Fire Dance
7. 紡音♯4 目覚め Awakening
8. A Pice Of Cake!
9. 紡音♯5 太陽はかく語りき 
  Thus Spoke the Sun
10. Smile
11. 紡音♯6 にわか雨 Sudden Shower
12. Thank you
13. 紡音♯7 明るい暗闇へ 
  Step Into the Bright Darkness
14. 紡-tsumugi-のテーマ
15. 紡音♯8 再び、水鏡 
  What Water Reflected

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