Kanazawa Jazz Days

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ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

瀬戸内寂聴:奇縁まんだら、石原慎太郎:わが人生の時の人々 、それに大杉魔子の話などつらつら


大杉栄、大杉魔子、伊藤野枝伊藤野枝は亡くなる28歳までに7人の子供を出産したため、常に乳臭かった、という話をどこだったか、で読んだ。

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(左)瀬戸内寂聴:奇縁まんだら(2008)
(右)石原慎太郎:わが人生の時の人々 (2002)

海外出張の機内で瀬戸内寂聴の奇縁まんだら(続)を読んだ。(正)も含め,横尾忠則のイラストとあわせ奇抜な昭和作家伝となっており楽しい。この本を読んでいて既視感が強く、何だろうと考えていた。そのうちに思いだした。石原慎太郎の"わが人生の時の人々"。同じような趣向の本は沢山あるが、これらは似ている。天性の”懐に入る才:ひとたらし”。二人とも笑いで破顔したときの力はTVカメラを通じても伝わるくらい凄い。本のテイストはとても似ているが、瀬戸内さんのほうが色香をまとう品があった。知事殿の本は自慢にみえなくもない箇所多し。品が足りない。
有吉佐和子のあり方(才あれど色も縁もなし)が、ふたりとも変わらないのがおもしろい。

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以上のメモは一昨年に書いたものを転載。この瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」の連載は続いていて、単行本は3巻まで出た。しかるに、面白いヒトネタは出尽くした感があって、なんとなく連載当初から徐々にパワーダウンしている感は免れない。だから日曜の日経新聞が楽しみ、というのは随分過去のことになってしまった。まあ仕方がないかな。

そんな中、大杉魔子の話が掲載された。1923年(大正12年)に甘粕正彦を責任者とする憲兵隊に惨殺された大杉栄伊藤野枝の娘。大杉栄伊藤野枝のあいだには四女一男の子供がいたが、魔子は長女。瀬戸内寂聴がその昔に取材したときの話が掲載されていた。内容は取り立てて面白いものでなかったが、あまり消息を聞かない方だったので興味深かった。取材の3年後、50歳過ぎで交通事故死されたとのこと。魔子の妹ルイズについては、松下竜一の「ルイズ—父に貰いし名は」で取り上げられていたのだが。

伊藤野枝には、同じアナキストである辻潤とのあいだに一(まこと)、流二とふたりの男子があり、ボクは辻まことの「山の本」を随分読んだ時期があった。シニカルときとしてコミカルな文章はとても洒脱で、アカぬけないボクは随分憧れを感じたものだ。

その辻まことの評伝が西木正明「夢幻の山旅」。この本は暴露本的な内容で、雑誌:アルプ特集号「辻まこと」(追悼号)や雑誌:山と渓谷の「辻まこと特集号」などで書かれている年譜と事実の違いを指摘していた。癌が直接の死因でなく自裁であったこと、愛人との間に子供をもうけていたことなど。その「夢幻の山旅」に魔子が登場している。母親(野枝)に捨てられた辻まことが、魔子に亡くなった母親の幻を重ね,そして関係を持つ、という小説だったら、あまりに安っぽい展開。評伝としては、なんだかなあ、という後味の悪さが残っていた。だから、なんとなく大杉魔子の名前を「奇縁まんだら」でみたときにはドキッとしたのだ。

よくよく考えたら、瀬戸内寂聴瀬戸内晴美)による大杉魔子取材は、瀬戸内の小説「美は乱調にあり」、「諧調は偽りなり」に反映されている筈。まだこれらの本を読んでいなかったことに気がついた。そんなことを思い出したりしながら読んだから連載「奇縁まんだら--大杉魔子」は面白かったのだ。

明治の昂揚のあとの大正という時代に「ヘン」な個性が咲き乱れたこと、が面白くて、なんとなく気になっているのだ。