Kanazawa Jazz Days

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Kanazawa Jazz Days

ジャズを中心としたレコード/CD、登山/渓流釣り/ランニング、金沢の日々の暮らし

(ECM1080) John Abercrombie, Ralph Towner: Sargasso Sea (1976) 40年前には

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 昨日、Kris Davisのデュオを聴いていたら、何となくECMのアルバムが懐かしくなって、唐突にECMのレコードに回帰。あのニューヨークの奏者達の音の底流にECMの音世界があって、ECMで創られたジャズと非ジャズの境界の融解、それもジャズを囲む360度の方位、ほぼ全てで。その室内楽的な取り組み、を方法論としてrespectし、再びジャズとして再構築に取りかかっている人たち、のように思えている。 

 このアルバムはそんな典型的なECMのアルバムであり、ほぼ今日に連なる内容で今日においても全く時間の劣化、のようなものを感じない、鮮度の高い録音。やはり、アコウスティックな感触を尊重しながら、クロンビーのエレクトロニクスの味を音場の背景として、実に上手く使っている。クラシック的なタウナーの味と見事に対比させている。 

 よく聴いていると、ジャズ的な味は実に希薄なのだけど、ジャズという音楽の外縁に見事に位置していて、このような清澄な音世界から、その後のメセニーのPMGも生まれたんだなあ、と思った。そして、そのような音世界がジャズからの遠心力や、ジャズへの求心力を一切感じさせず、ごく自然な音楽として存在している、凄さ。40年前には、間違いなく、この音の位置取り自体が新しい筈なのだけど、そんなことすら一切感じさせない。

 録音も絶妙。音の輪郭がアコウスティックのやや鋭角気味の音、エレクトロニクスのやや丸みを帯びた音の差異を鮮やかに描き、僅かな残響が奏者を包む空間に奥行きを与えている。聴いていて、改めて魅了された。

参考記事:

 

ECM Touchstones: Sargasso Sea by John Abercrombie (2008-08-26)

ECM Touchstones: Sargasso Sea by John Abercrombie (2008-08-26)

 

 

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[2011-01-21記事] 雪夜の時間の揺らぎを想い出しながら

安借家の障子にうつる鈍い光が朝を知らせてくれた。二日酔い、ではなかった。少し呑みすぎたようだけど。近所の酒場で久しぶりに長尻してしまった。雪が降る晩は、なんだか時間の尺度が揺らいでいるような感覚があって、ゆっくり過ぎたり、忙しく過ぎたり、そんな感触がたのしい。だから呑みすぎた。

雪の朝の光、目の前の竹林に被る雪からの散乱、濁った白さ、曖昧なグラデーションの空、そんなものを眺めているとECMECMらしい音が聴きたくなった。昨年末に横浜で買ったLPレコードをターンテーブルにのせた。針先から伝わる音溝の追跡の様子が再び雪夜の時間の揺らぎを想い出させる。

ジョン・アバークロンビーラルフ・タウナーのデュオSargasso Sea。印画紙のようなつるっとしたジャケットの感触が懐かしい70年代のECMのアルバム。北欧のスタジオで繰り広げられた透明度の高い、そしてひんやりとした大気のなかでの対話が濃密に広がる。部屋の隅々まで。ギター2本の音世界は隙間だらけで,その隙間の揺らぐ様が裏返しの音になっている。ボクが楽しくなるのは,そんな無音の揺らぎが、やはり雪夜に呑む酒のように酔わせてくれるのだ。

Sargasso Seaって、wikiによると:
サルガッソ海(サルガッソかい、Sargasso Sea)は、メキシコ湾流、北大西洋海流、カナリア海流、大西洋赤道海流に囲まれた海域。北緯25度〜35度、西経40度〜70度。長さ3200km、幅1100km。浮遊性の海藻「サルガッスム」(Sargassum、ホンダワラ類)にちなむ。サルガッソー海とも。
つまり子供の頃の学習雑誌なんかにお決まりのように特集された「世界の謎」の一つ「バミューダトライアングル」、船の墓場のこと。ふたりのギターデュオも微温の海を漂うような、流れではない、音の散乱?を出し続けているのだ。

それにしてもECMのLPレコードの音は溜息モノ。特に独盤は。ただ冷たい大気の感じや、透明感や、乾いた空気がつくる楽器のアコウスティックな鳴動の感触を伝えるだけでない。ひとつひとつの音の粒度が艶やかで、どきどきしてしまうのだ。このアルバムの音造りでとても面白いのは、アバークロンビーの電気音とタウナーのアコウスティック音の絡み。ちっとも不自然じゃないし、ただの環境音楽ではない個性になっている。LPレコードをひっくり返してB面の冒頭で、アバークロンビーのエフェクターのエコーに驚いたりする感じが、かつてのアルバムに存在したA面、B面という小さな劇場の幕場を思いださせて、懐かしい感触で一杯になるのだ。

そんな週末の朝、雪の朝が楽しい。

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(ECM1080) John Abercrombie, Ralph Towner: Sargasso Sea (1976)
A1. Fable (J. Abercrombie) 8:40
A2. Avenue (J. Abercrombie) 5:16
A3. Sargasso Sea (J. Abercrombie, R. Towner) 3:57
A4. Over And Gone (J. Abercrombie) 2:46
B1. Elbow Room (J. Abercrombie, R. Towner) 5:10
B2. Staircase (R. Towner) 6:20
B3. Romantic Descension (J. Abercrombie) 3:15
B4. Parasol (R. Towner) 5:24
John Abercrombie (g), Ralph Towner(g,p)
Layout: B. Wojirsch
Photograph [Back Cover] : Jürgen Müller
Photograph: [Front Cover] : Franco Fontana
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Twelve-string Guitar, Classical Guitar, Piano –
Recorded at Talent Studio, on May 1976, Oslo
Released: 1976

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